日本の音楽シーンをリードし続ける細野晴臣=2006年のライブから (c)朝日新聞社
日本の音楽シーンをリードし続ける細野晴臣=2006年のライブから (c)朝日新聞社

 作家・コラムニスト、亀和田武氏が数ある雑誌の中から気になる記事を取り上げる「マガジンの虎」。今回は「ミュージック・マガジン」。

 ロックとは何か。そんな命題を掲げ、青臭いまでの情熱で、中村とうようが「ニューミュージック・マガジン」を創刊したのが69年4月だ。
 
 創刊50周年を迎えた「ミュージック・マガジン」(ミュージック・マガジン)4月号の特集はまず細野晴臣、もう一本も興味をそそる“50年の邦楽アルバム・ベスト100”ランキング発表だ。

 はっぴいえんど『風街ろまん』が、50人の選者に推されて堂々の1位である。発売は71年。「この作品に対する高い評価は発表当時も50年近く経ったいまも変わらない。いや評価の高さは発表時以上かもしれない」(北中正和)

 2位がシュガー・ベイブ『SONGS』で、3位が大滝詠一『ロング・バケイション』だ。この2作の魅力も、色あせてはいない。

 ゆらゆら帝国『空洞です』が、4位と健闘しているのがうれしい。5位がYMOで、細野晴臣は8位と16位にも。細野晴臣(と、はっぴいえんど~ティン・パン・アレー系)の圧勝だ。荒井由実『ひこうき雲』の9位も納得。

 特別ボーナスに創刊号の完全復刻版が付いていて、これも必読。ビートルズ一強の時代が終わった直後の混乱が興味を惹く。「レッド・ゼッペリンがよかった」というリスナーのお便りを紹介しているのは大御所の福田一郎。誰もが新しいロックに当惑している。

 特集が“アート・ロックと白人ブルース”だもん。司会のとうようさんと議論する水上治は後に「ミュージック・ライフ」の編集長となる水上はる子さんだ。ビートルズがツェッペリンにとって代わられ、全共闘が後退戦を強いられていた69年。私は創刊号をバリケードで読んだ。

週刊朝日  2019年5月3日号‐10日合併号