一人で自分と向き合って、自分の本性に従って生きれば自然に自分も嬉しいはず。そんな、自分を喜ばせる生き方がしたい。そしていまこのままの自分を受けとめて、自分を愛していきたい。「昔は競争にさらされて、自分はなんてダメな人間なのだろうと卑下したこともありました」。大学を出た後、臨時採用教員として働きながら教員採用試験を受けたが、毎年毎年、不合格。そして専業主婦になってからも、劣等感が拭えなかった。

「ひとと比較しては、自分を否定して。でも年をとって一人で生きるようになってようやく、そんなの『なんぼのもんだ』と思えるようになりました」

 肝心なのは、いつも自分の気持ちが満たされているかどうかではないか。ひとと自分の人生を比べることに何の意味もないではないか。一人、自分と対峙する生活の中で若竹さんはそんな心境に辿りついたという。

「人間って面白いもので、年齢と共に体は衰えていきますが、心は成長していくんです。老いるということは心は成熟に向かうということなんだなと最近思います。孤独は心に絶対的な自由をもたらしてくれる。その自由を享受しながら生きることは楽しいことです」

 若竹さんにとって孤独とは、心の解放そのものなのだ。

(ライフジャーナリスト・赤根千鶴子)

週刊朝日  2019年5月3日‐10日合併号