設営中の科博展示会場中央部。海の中で遭遇したかのようにマッコウクジラを見上げることができる。このエリアには約200種類の哺乳類の剥製標本が一堂に会する【3月19日、国立科学博物館/東京・上野】 (撮影/写真部・松永卓也)
設営中の科博展示会場中央部。海の中で遭遇したかのようにマッコウクジラを見上げることができる。このエリアには約200種類の哺乳類の剥製標本が一堂に会する【3月19日、国立科学博物館/東京・上野】 (撮影/写真部・松永卓也)

 学術・科学の分野で日本を代表するコレクションと研究を誇る国立科学博物館。これまで数々の大型展覧会を開催してきた。2010年に開催され大好評だった大哺乳類展が3月21日に帰ってきたのを機に、その舞台裏を案内してもらった。

【写真特集】「大哺乳類展2」の舞台裏に潜入!

 大哺乳類展2では剥製や骨格標本500点以上が展示される。多くは茨城県つくば市にある国立科学博物館(科博)の筑波研究施設の標本棟にあり、一つひとつ丁寧に梱包され上野の本館に輸送された。

 注目は全長16メートルのマッコウクジラ。2009年、鹿児島県南さつま市に打ち上げられた個体から再現した半身の模型と全身骨格を組み合わせて、天井から吊り下げ展示。大型のため、別の場所で仮組みをして万全を期した。

 2月16日、会場に展示する前に、大きなスペースのある静岡県富士市の工房で、実物の写真をもとにマッコウクジラの骨と模型を仮組みして骨の位置や角度など確認し、調整を行った。この模型は硬質な発泡スチロールでできている。

「マッコウクジラの巨大な頭部の大半は脂肪で占められているんですよ」と教えてくれたのは大哺乳類展2の監修者の一人、田嶋木綿子さん。 

 正確さとスピードが求められる細かい調整が続く。カタチにこだわるのは、ただ標本を展示するのではなく、実際に海で泳いでいたときの姿を再現したいという思いがあるから。

「マッコウクジラの全身を今回のような再現方法で見せるのは世界初だと思います。それだけに、骨のつながりや位置、外形を決めるのは大変でしたね」と田島さんは話す。

 3月6日は剥製標本の梱包、搬出が大詰めを迎えていた。国立科学博物館標本棟には体調2・5メートルのホッキョクグマをはじめ、さまざまな哺乳類の剥製標本がある。梱包は剥製を扱うプロ集団が担当。小動物の骨格はそのまま箱に詰める。頭部が壊れやすいためエアキャップで保護し、箱に収める際、中で動かないよう固定することが重要だ。 

 3月12日、国立科学博物館に、かつて新江ノ島水族館のショーに登場していたミナミゾウアザラシの「ダイキチ」の剥製が到着した。高さが3メートル以上あるため、科博のエレベーターに乗るか危惧されたが、なんとか大丈夫だった。ほかにも次々と剥製標本が搬入された。

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