昨年10月、ワシントン州の最高裁判所は死刑制度を廃止する判決を下した。類似事件で死刑判決を受ける確率が、白人より黒人のほうが高く、「人種的に偏りがあり、無効」と判断したからだ。8人の死刑囚は終身刑に減刑されることになった。また、カリフォルニア州のニューサム知事は今年3月、死刑執行の一時停止を命じる文書に署名。同州内の737人の死刑囚の刑執行が停止されることになった。

 石塚氏が説明する。

「死刑を廃止するための新たな法整備や制度を変えるには、時間がかかります。ワシントン州などでは早期に対応するため、恩赦委員会を作り、一つ一つの事案を調査して恩赦で減刑していったのです」

 米国では、90年代に「スリーストライクス・アンド・ユー・アー・アウト法(三振法)」が成立。重罪で2回の前科があると、3回目は軽い罪でも自動的に終身刑が言い渡されることになった。このため、収監者や終身刑の受刑者が激増。恩赦で高齢の受刑者を早期釈放する方策が進められているという。

 日本で収容中の確定死刑囚は109人。オウム真理教事件などをきっかけとする90年代半ばからの厳罰化の流れによって、死刑や無期懲役が急増した年もあるなど、量刑の推移にはバラつきが見られる。

『犯罪白書』によると、17年の死刑確定数は2件。近年、最も多かった07年は23件に上る。無期懲役の確定数も17年は18件だが、05年は134件、06年は135件もあったのだ。こうした量刑の歪みを正す必要があると、石塚氏は指摘する。

「いまの相場からすると、量刑が重過ぎる人がたくさんいることになります。無期懲役の受刑者が仮釈放になるまで35年くらいかかります。1審死刑判決から2審で無期懲役に減刑されたようなケースは“マル特無期”といって、一生刑務所から出られない。仮釈放しないのが慣行になっているのです。無期懲役の受刑者は全国の刑務所に約1800人いると思われますが、どんどん高齢化しています。職員や他の受刑者が介護しながら、刑務作業をさせていることも少なくないのが現状です」

 現在、刑務所は高齢者福祉施設と化しており、人権上の問題ばかりでなく、財政負担も重くのしかかる。

「個別恩赦を運用して、高齢者など再犯リスクのない人を釈放していく道筋を探るべきです」(石塚氏)

 天皇代替わりは、恩赦制度を見直す機会でもあるといえそうだ。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事