東京大学本郷キャンパスの赤門 (c)朝日新聞社
東京大学本郷キャンパスの赤門 (c)朝日新聞社

 3月10日に、東大一般入試の合格発表があったが、一足先に、東大推薦入試に合格した受験生たちがいる。3月1日号に続き、受験を決めた高校時代の思い出深い活動や、将来の夢を聞いた。

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■化学を究め、世の中にないものを作りたい
東大理学部 通岡知輝さん 市川(千葉)

「白衣を着て、試験管を持って薬品を混ぜたり、顕微鏡を覗いたりする。物心ついた頃に見たアニメの科学者の姿に憧れ、科学者になりたいと思いました」

 小学生のときもずっと理科が好きで、市川中に入学すると化学部に入部した。

「高校では理系は週4時間化学の授業があり、約4割が実験。化学部でもほぼ毎日実験しました」と、実験に没頭する日々を送った。

 高1から高2にかけて、SSHの活動の一環で、反応のメカニズムを解明するための「化学発光振動反応」の研究に取り組んだ。その研究で、高2のときに高校化学グランドコンテストで全国2位の賞を受賞した。

 母がマレーシア人で、家庭では英語も使うため、英語が堪能。中3のときに英検準1級を取得し、高2のときTOEICで865という高スコアを獲得し、シンガポールで行われた「インターナショナル サイエンス ユースフォーラム」では日本代表として、英語で研究成果を発表した。

 中3から4年連続で化学グランプリに出場し、高3のときに銀賞を受賞した。

 推薦入試では、これらの研究発表会や各種科学コンテストでの実績と、英語能力をアピールした。

「有機化合物の新しい合成方法を研究し、世の中の役に立つ、新しいものを創りだしたい」と笑顔で将来の夢を語る。

■宇宙開発で人類を幸せにしたい
東大工学部 後藤愛弓さん 広尾学園(東京)

 小学生のころから理科や算数が好きで、中高一貫の広尾学園に入学。高校から医進・サイエンスコースに進んだ。

 高2のときの放課後は、週に3日バドミントン部で活動。そのほか、高1の文化祭で色素増感太陽電池について発表した後、「p型半導体を含む正極触媒を用いた色素増感太陽電池の高電圧化」の研究に取り組んだ。

「従来のシリコン型太陽電池と比べると、色素増感太陽電池にはコストが安いなど、さまざまなメリットがあるため、実用化を目指しています」

 この研究についてスタンフォード大学でプレゼンテーションし、つくばサイエンスエッジでは英語ポスター発表をした。

 太陽電池の研究と並行して、自主的に取り組んだのが「HP Mars Home Planet」という国際プロジェクトだ。

「『100万人の人間が、火星で生活する上で必要な建物や乗り物のアイデアを考える』プロジェクトに興味を持ち、同級生や部活の後輩を誘って、チームを作りました」

 色素増感太陽電池と鉛の層の外壁で放射線を防ぐピラミッドハウスを提案し、高3の春に国内大会で最優秀賞を受賞した。

「その後、東大推薦入試のアドミッションポリシーを読んだとき、東大に呼ばれているように感じ、挑戦するしかない、と思いました」

 東大の最大の魅力は「学際的な研究に取り組める環境」だという。

「東大ではエネルギー分野のほか他分野も横断的に学び、将来は宇宙開発にたずさわる研究者になりたいです」


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しまね留学で志したこと