これらの報道を受けて、学校や警察が警戒を呼びかけると、今度はその注意喚起がMomoチャレンジの存在を裏づけるものとして扱われ、報道はますます過熱。英国だけにとどまらず、米国でも多数の地方テレビ局が取り上げた。

 こうした報道のほとんどは、Momoチャレンジの証拠となるメッセージや動画を示すことも、その現象が事実であるかどうかを検証することもなかった。保護者の証言や伝聞、噂、専門家の意見などを取り上げ、その危険性を誇張し、恐怖心を煽るものであった。

 この都市伝説は、ソーシャルメディアで自然発生的に広まったのではなく、報道や学校・警察などの対応によって増幅されていったのだ。

 都市伝説的なものをメディアが取り上げることで、結果的にその増幅に加担してしまうことはこれまで多く見られてきた現象だ。ソーシャルメディアで流布する真偽不明な情報に、既存メディアはどう向き合うべきか。今回の一件は様々な課題を残したと言えよう。

週刊朝日  2019年3月22日号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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