中間選挙の直前には、サイバー軍が政府機関と連携して、工作員に直接警告メッセージを送る作戦を開始したことを明らかにしている。

 今回ワシントン・ポストが報じたサイバー軍の作戦は、この戦略を踏襲したものだ。従来に比べ攻撃的な性格が強く、IRAによる世論操作を未然に防ぐための「先制攻撃」と見ることもできる。同紙によれば、この作戦はトランプ大統領の承認を得て、通常作戦として実施されたものだという。

 これまでも政府主導のサイバー攻撃はしばしば行われてきたが、その作戦は秘密裏に実施され、政府の関与も否定されることが一般的だった。今回の作戦は「反撃」という側面が強いとはいえ、政府主導のサイバー攻撃を当局者が認めた点で、従来より大きく踏み込んだものといえるだろう。

 情報戦争、サイバー戦争は新たな局面を迎えることになるのかもしれない。

週刊朝日  2019年3月15日号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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