それが今大会では「ショーマ語録」は封印。ケガが続き練習不足の状態で大会入りしたせいか、SP4位で終わると「悔しいと言う権利は僕にはない」と唇をかみしめ、優勝後は、「1位になることは自分のためだけではなくて、他の人のためにもなるんだ」と支えてくれた周囲への気遣いをみせた。

 さらに、来る世界選手権への抱負を聞かれると、「1位にこだわる」と明言。かねてより「雲の上の存在」と語っていた羽生結弦超えを示唆した。

 こうした宇野の変化について、田村さんは「これまでの宇野選手は、羽生選手を追いかける弟分。それは楽に違いないが、いつまでも追っている立場ではダメだという『自覚』が出てきたのでしょう」と分析。世界選手権については「つらくても四大陸選手権を乗り越えたんだという自負が彼を支えるはず。すべての選手と堂々と渡り合えると思います」と期待を寄せた。

 「絶対王者」羽生も参戦が予定されている世界選手権(3月20日~24日さいたまスーパーアリーナ)。「憧れの人」を超えることができるか。宇野の覚醒の瞬間から目が離せない。(本誌/工藤早春)

※週刊朝日 2019年3月1日号