別の教員が説明する。
「昨年4月7日の職員会議で、平野校長が一方的に、セクハラを受けたというBさんの言い分を読み上げてしまったのです。説明の仕方も『左手で胸を』うんぬんなどと詳細に報告したため、会議室は騒然となりました。Bさんの人権に対する配慮を欠いたばかりか、処分中で不在のX教諭が復職したときの対応を難しくし、問題をこじらせてしまったのです」
被害にあったBさんは職員会議の場にいなかったとはいえ、心境は察するほかない。同時に、X教諭に対する他の教員らの反感をあおる格好にもなったのである。
教職員有志一同の名で、東邦大の炭山理事長に“解雇”を求める「要望書」が提出される事態にまで陥ったのだ。
<本校においては、入試の志望者が激少しているこの数年来の傾向に、この事件が決定的な打撃を与えるものではないかと危惧する>
<我々は、もはやこの職場でX氏と共に働くことは考えられないのである>
檄文調で理事長に対して厳罰を促しているのだ。他の教員らの反発もあって、X教諭は昨年4月下旬の復職予定日が過ぎて現在に至るまで、出勤できない状態が続いている。
前出の教員はこう語る。
「X教諭のセクハラは非難されるべきだが、平野校長も入った懲戒委員会で決定した処分はすでに受けているのに、復職できないのは、おかしいのではないかという声もある。一事が万事こんな調子で、平野校長はあまり沈思黙考しないで発言して、傷口を広げた」
一方、パワハラ問題が初めて露見したのは、17年7月のことだ。1学期の終業式後の職員会議では、前年度の進学結果の総括を行うのが恒例になっているという。16年度卒業生の現役の東大合格者数は28人で、15年度の37人から減少した。16年度の高校3年のある教科の担当者だったのは女性教諭Cさん。同じ科目の男性教諭Z氏が会議でCさんに対して非難を浴びせたというのだ。
「担当者は何をしているんだということになるじゃないですか!」
Z教諭の剣幕に会議室は静まり返ったという。Cさんはいたたまれず退室し、過呼吸の発作を起こした。