東大の現役合格者数で指導の優劣を評価するのはあまりにも短絡的というほかないが、17年度も27人と減っているのだから、Cさんの責任ではないことは明らか。Z教諭によるCさんに対するパワハラ行為はこのときばかりではなく、2~3年にわたって続いており、Cさんは相談窓口にパワハラの救済を求めた。

 ところが、Z教諭は逆上。あろうことか、自分が受け持つクラスの生徒の前で「Cにいわれのない濡れ衣を着せられた」などとCさんを名指しで非難。生徒たちがZ教諭を擁護するために、職員室に押し掛けて抗議するという事態に至った。

 心身にダメージを負ったCさんは、昨年度の3学期から出勤できなくなった。

「平野校長は昨年4月からZ教諭に自宅待機を命じ、いまも学校に来ていません。いまの管理職たちのガバナンスがなっていないことを露呈しています」(前出の教員)

 パワハラを受けたCさんは取材に対し、次のように答えた。

「Z先生の行為について、これ以上オープンにするつもりはありません。いまは生徒のことを大事に考え、学習環境が守られることを望んでいます」

 平野校長を支持する声もある。学校関係者が語る。

「Cさんがパワハラ被害を訴えたのは17年9月ですが、法人本部が回答を出したのは昨年11月のことです。1年2カ月もかかっているのです。Z先生に不適切な行為があったことを認めた上で注意処分で済ませた。被害者のほうが離職することにならないよう、加害者と学校で顔を合わせることがないよう平野校長は環境作りを進めたのです。一方で、自宅待機中のZ先生に対しても給与の支払いは保証しています」

 今回のセクハラ・パワハラ問題について平野校長に取材を申し込むと、「いまは回答することができないのです。理由も申し上げられない」と答えた。

 法人本部の中村俊一郎常務理事も「学校内のことなのでコメントすることはございません」との回答だった。

 教育学者の大内裕和・中京大学教授はこう指摘する。

「人事異動のない私立校の悪い面が出てしまった印象です。私立の場合はずっと同じ職場にいるので、本来は学校をよくしたいという教員のモチベーションは高いはずです。しかし、校長や理事長など管理者に問題があると自浄作用が働きにくくなるリスクがあります。ハラスメント行為が起きたり、教員間の人間関係が悪くなったりした場合、問題が滞留して解決が困難になります。人事異動などで処遇する手立てがないので、教員が失職せざるを得なくなるなどの弊害がある」

 名門私立は、生徒や保護者からの信頼を取り戻せるのか。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2019年2月8日号