ラケットを振りかぶるも、地面にたたけつけるのをこらえたことにも注目する。

「『衝動のコントロール』です。深呼吸でも、数を数えるとかでもかまいません。自分が怒っているとわかって、やめてラケットを置いたということです」(同)

 うなづくしぐさも大きなポイントだという。

「おそらく『セルフトーク』をやっていると思います。自分自身に『こうすれば乗り切れる』『大したことない』など話をして、自分自身でうなずいている状態だと思います」(同)

 安藤さんによると、アスリートの場合、試合中と普段の日常生活の両方で気持ちのコントロールをしていることが重要だという。

「日常生活からやっておくことで、すぐ試合中に同じことができるようになります。おそらく大坂選手は、練習中も日常生活も(メンタルコントロールを)していると思います」(同)

 決勝の相手は、初対戦のぺトラ・クビトバ。乗りに乗っている28歳だ。

「今大会、一番好調の選手。サーブもストロークも良く、勝ち上がりもすべてストレートセット(1セットも落としていない)。どちらが先に自分の攻めの形に持っていけるかがキーです」(杉山さん)

 そのクビトバから第1セットを先取。相手の猛追で第2セットは失うも、攻めのテニスで死闘を制した。

 世界ランク4位で今大会に臨んだ大坂。1年前の全豪出場時は72位、昨年優勝した全米オープン出場時は19位。「駆け上がってきたスピードの速さにびっくりです」と杉山さん。東京五輪を待たずして、テニス界の頂点に立った。(本誌・緒方麦)

※週刊朝日 2019年2月8日号