14歳の木原美悠。冷静な試合運びに大人も舌を巻く(c)朝日新聞社
14歳の木原美悠。冷静な試合運びに大人も舌を巻く(c)朝日新聞社

卓球界にまた新星が現れた。1月14日から20日に行われた全日本選手権の女子シングルスで、14歳の木原美悠が、優勝候補の一人だった平野美宇(18)を5回戦で敗ったのだ。平野は中国代表の五輪メダリストを破るなど、今や伊藤美誠(18)とならぶ世界トップクラスの選手。木原はその平野を相手に4−1で勝利した。

 その後、決勝に進出。伊藤に惜しくも敗れたが、卓球コラムニストの伊藤条太さんは言い切る。

「予想以上の伸び。でも、まぐれではありません。平野や、その後の森さくら(22)、カットマンの佐藤瞳(21)を連破して、決勝では伊藤からも1セットを取りました」

 伊藤さんは、木原のプレーの特徴として球威の強さを挙げる。かつて石川佳純が中学2年でベスト4入りして話題になったが、当時の石川よりも球威があるという。

「(まだ筋力がついていない)中学2年にもかかわらず、ドライブでも点を取れるくらいのスイングスピードがあり、球威がある」

 さらに、メンタル面も指摘。

「常に冷静なんです。得点したら、張本智和選手の『チョレイ!』の様に大声を出すのが普通。でも、彼女はほとんど声を出さず、出す場合も控えめです」

 一般には無名に等しい木原とは何者なのか。急成長の秘密を探るべく、父親を取材した。

 木原の父・博生さんは兵庫県明石市で卓球教室を開いている。子供たちを日本代表に育てたいという思いから、脱サラして教室を開いた。木原は幼いころから父の教室で腕を磨いてきた。博生さんもわが子の快進撃に驚いていた。

「正直あそこまでいくとは思っていませんでした。平野選手のところがヤマ場かなと思っていましたが、平野選手に勝って、決勝までいったので、びっくりしました」

 14歳とは思えない冷静な試合運びについて、父の博生さんは、こう明かす。

「もともとの性格もあるんですけど『あまり人にええとこ、あかんとこ、みせたら相手もわかってくるで』と言いきかせてたので、それもあると思います。相手選手としては、読みにくいでしょうね」

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絶対に「寂しい」「帰りたい」とは言わない