帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一氏 (撮影/多田敏男)
帯津良一氏 (撮影/多田敏男)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「認知症と免疫年齢」。

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【ポイント】
(1)脳の老化は「免疫年齢」に大きく左右される
(2)「免疫年齢」はホリスティックな見方につながる
(3)精神を健康に保つために免疫向上剤が有効

 前回は『神経免疫学革命──脳医療の知られざる最前線』(ミハル・シュワルツ、アナット・ロンドン著、松井信彦訳、早川書房)という著書のなかで語られている、免疫が認知症に対して果たす役割について紹介しました。今回もその続きをお話ししたいと思います。

 この本で注目に値するのは「免疫年齢」という考え方を導入しているところです。以下にその部分を引用します。

「私たちは、脳の老化は必ずしも実年齢を反映したものではなく、むしろその人の『免疫年齢』に大きく左右されると見ている。体、環境、栄養、遺伝が絡むほかの要因とともに、各人の免疫の健康状態も、老化の一環として現れる脳機能障害の進行や程度を決定づけるのだ。世の中で『うまく年を取っている』人がいる理由は、この見方で一部説明がつくかもしれない」

 つまり脳の老化が進み認知症のリスクが高まっても、免疫年齢が若くて、免疫系が頑強な人は、そのリスクを回避できるというのです。

 この考え方は、長年がん診療に携わってきた私には、とても納得がいきます。

 加齢によって遺伝子の損傷リスクが高まりますから、がんになりやすくなるのは理解できます。しかし、実際には若くしてがんになる人もいるし、高齢になってもがんにならない人がいます。この違いは何なのでしょうか。また、がんはとても健康そうに見える人でも、気づいたら進行していることもあります。これはどういうことでしょうか。

 私はがんという病気は、がんになった部分だけを見るのではなくて、人間を丸ごと見ないと理解できないのだと言い続けてきました。つまりホリスティックな見方ががん診療には不可欠なのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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