実は、1956年に鳩山一郎首相がソ連との“2島プラスアルファ”の話し合いを途中で打ち切ったのは、当時冷戦中で、鳩山首相の言動を自国に対する裏切り、と捉えた米国が強い圧力をかけたためだったのだが、日本人の多くはソ連が打ち切らせたと誤解している、とも話した。

 それにしても、今回のG20は、トランプに習近平、プーチンも日本との会談に力を入れ、まるで安倍首相が中心になっているかのような構図だった。

 だが、自民党の複数の幹部が内心心配しているのは、安倍首相が外交で精いっぱいで、国内政治に取り組む余力がなく、担当省庁から上がってきた構成案を読んでこなしているだけではないか、ということだ。入管法改正案にしても、内容は何も詰められないまま、衆院17時間15分、参院20時間45分で強行採決される見通しで、憲法改正の審議も先延ばしになってしまった。自民党内で詰められていなかったからだ。自民党幹部だけでなく、私も心配である。

週刊朝日  2018年12月21日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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