忘れがちな手続きとして葬祭費がある。後期高齢者医療制度に加入している人が亡くなった場合、葬儀を行った喪主などに対して支払われるお金だ。金額は市区町村によって違うが、3万~5万円ほどが多い。

「一般的には、死亡届を市区町村役場に提出する際に案内されます。ただ、その日は時間がないとか、自分ではなく残された親の口座情報を書こうと思って書類を持ち帰ってしまうとか、そのまま忘れてしまうケースがよくあります」

 必要書類は自治体によって異なる。葬儀費用の領収書を求められるところがあれば、喪主の名前が記載された会葬お礼はがきのコピーでよいところもある。

 また、高額療養費制度は死後でも請求できることを知っておきたい。これは、病院や薬局の窓口などで支払う医療費が一定額を超えると払い戻しを受けられる制度。亡くなる直前までの通院や入院で医療費が高かった場合、手続きしておこう。

 故人に年金以外の収入があるなど確定申告しなくてはならない場合、死後であっても相続人が代わりに申告する必要がある。これを「準確定申告」といい、払いすぎていた税があれば還付を受けられる。

 もらえるお金だけでなく、出ていくお金をストップする手続きも忘れないようにしたい。電気、ガス、携帯電話、クレジットカードなどはそれぞれの会社の窓口に連絡し、解約手続きをしよう。雑誌の定期購読など、定期的に課金されているサービスも速やかに解約したい。どんなサービスを利用していたかは、預金通帳やクレジットカードの明細、郵便物などで確認できる。

 亡くなった後のもろもろの手続きをスムーズに進めるため、どんな準備をあらかじめしておくべきだろうか。それは、必要な情報を集めておくことと、故人の意思を確認しておくことに尽きる、と言える。前出の山田さんは「そのためにうってつけなのがエンディングノート」と勧める。

 取引金融機関名、亡くなったときに連絡してほしい人、どんな葬儀を望むかなどを親自身に書いてもらうノートだ。親自身の希望を知り、様々な手続きが円滑に進むだけでなく、思わぬ効果も期待できるという。

「たとえば、故人の希望どおり質素な葬儀をした場合、『こんな貧弱な葬式でかわいそう』などと言ってくる親類が必ずいるものです。こうした場合でも、エンディングノートがあれば本人の希望であることを証明できるので、いやな思いをせずに済みます」

 エンディングノートは書店などでも入手できるが、自分で箇条書きにしてもよい。

 とはいえ、記入してもらう情報は親自身の死を前提にした内容だ。ノートを親に差し出すことさえためらわれる、という人もいるだろう。そんな人に、山田さんはこうアドバイスする。

「親に頼むより先に自分のエンディングノートを書きましょう。自分よりはるかに長生きするはずの子が書いているのだから、自分も書こうという気になってくれますよ」

(ファイナンシャルプランナー/ライター・森田悦子)

週刊朝日  2018年12月7日号