前川喜平さん。本連載では読者からの前川さんへの質問や相談を受け付けています。テーマは自由で年齢、性別などは問いません。気軽にご相談ください。
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※写真はイメージです
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 文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は日本の女性の幹部登用が進まないことに疑問を持つ男性からの相談です。

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Q:なぜ女性の幹部登用が進まないのでしょうか。日本では会社の管理職を始め、重要なポジションに女性が少ないのが現状です。例えば、現内閣で女性大臣は、片山さつきさんだけ。加えて、日本初の女性首相候補として名前が挙がるのは、古くは田中真紀子さん、最近でも小渕優子さん、稲田朋美さん、小池百合子さん、野田聖子さんと、問題になった人ばかりです。(愛知県・61歳・男性・会社員)

A:僕は、女性の活躍についてはあまり悲観していません。なぜなら、今は女性の方が優秀だから。放っておいても女性が活躍し始めるのは時間の問題だと思います。むしろ、既存の秩序に捉われて身動きが取れない男性の方が心配です。

 僕は文部科学省時代に、民間企業から資金を募って、大学生・専門学校生や高校生を対象にした海外留学プログラムの責任者になったことがあります。「この国で、これを学びたい」という明確な意思と動機を持った人たちを募集したのですが、応募してきたのは女子の方が断然多かった。実はこうした傾向は先進国共通であって、教育関係の国際会議では、“やる気のないBoys”問題が話題になっています。こうした男子の学習意欲の低下は、古い観念に縛られた教育ママによる過干渉・過保護が背景にあるように感じます。母親のそういった干渉は、女の子より男の子に向かいがちなように思うのです。

 ともあれ、アメリカも遠くないうちに、女性大統領が出てもおかしくないし、日本でも女性首相が出る可能性は十分あると思いますよ。ただ、その前に「しょうもない観念に縛られているおじさんたちをどう追い出すか」という面倒な問題が残っています。

 女性の幹部登用が進まない理由の一つは、男性中心の行動様式が色濃く残っていることだと思う。例えば政治やビジネスの世界では、重要なことは夜の会合で決まることが多い。酒を酌み交わしながら大事なことを相談するというやり方が、まかり通っています。一方、中央省庁の若い公務員は毎晩遅くまで国会質問の答弁を書かされています。夜が外せない稼働時間だというのは、子育て中の夫婦には厳しいですよね。

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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