私利私欲を許し不正を見抜けなかったのは、周りのイエスマンたち。17年度に約5億円の報酬をもらっていた西川広人(さいかわひろと)社長は、会見で自らの責任は認めずゴーン前会長の負の遺産をもっぱら強調した。虚偽記載では法人としての日産の立件も検討されており、経営責任が厳しく問われる。

 捜査も簡単ではない。元特捜検事の郷原信郎弁護士はこう疑問を示す。

「検察の捜査はかなり無理筋です。ゴーン氏と側近のグレッグ・ケリー氏だけ捜査の対象として他の幹部は不問にするのは、会社側に加担することになりかねません。今回の件を検察に持ち込んだ会社幹部から独立した第三者委員会を設置し、中立・客観的な立場で検証することが必要です」

 日産は22日の取締役会で、第三者委員会の設置を決めたが、メンバーや調査範囲はこれからだ。

 カリスマ経営者の逮捕で、日産や日本政府の対応が世界から注目されている。CMキャンペーンでは「やったぜ!日産」となっているが、ゴーン前会長だけを悪者にして終わらせることは、できそうにない。(本誌・浅井秀樹、亀井洋志、多田敏男)

週刊朝日  2018年12月7日号より抜粋