慶應義塾大 (撮影/吉崎洋夫)
慶應義塾大 (撮影/吉崎洋夫)
新設・拡充された主な大学の給付奨学金(週刊朝日2018年11月30日号から)
新設・拡充された主な大学の給付奨学金(週刊朝日2018年11月30日号から)
新設された主な財団の給付奨学金(週刊朝日2018年11月30日号から)
新設された主な財団の給付奨学金(週刊朝日2018年11月30日号から)

 奨学金を借りても返せずに苦労する声が聞こえてくるが、全国の大学や財団で返済の必要がない「給付型」の奨学金が続々登場している。多額の奨学金の返済支援をする企業や自治体も出てきた。借りない、返さない奨学金を活用する術を学びましょう。

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「奨学金のおかげで東京に進学することができ、学生生活が充実しています」

 というのは、大阪出身の慶応義塾大3年の男子学生。返済の必要がない給付型の「学問のすゝめ奨学金」から1年間に60万円の給付を受けている。

 こうした給付型の奨学金を設ける大学は、全国で増えている。

 慶大では12年に先の奨学金を創設。給付金額は年60万円(薬学部80万円、医学部90万円)で、学部によっては国立大に進むより学費などの負担が軽くなる。首都圏以外の地方の受験生が対象で、両親の給与収入が1千万円未満などの条件がある。また、入試前に奨学金受け取りの採否がわかり、受験生は費用の心配をせずに受験に臨める。

 この男子学生は関西の国立大か慶大など東京の私大を志望していた。だが、私大に進学すれば、多額の授業料や生活費がかかり、奨学金を借りることへの抵抗感があった。そんな中、慶大のホームページで給付型の奨学金を知った。男子学生はいう。

「奨学金がもらえることが事前にわかり、親も納得してくれましたし、安心できました。バイトは週2日に抑え、複数のゼミとサークルに所属できています」

 慶大は来年度から、初年度に20万円を加えて給付する。2年次以降、成績が優秀と認められると、年80万円(薬学部120万円、医学部150万円など)に増額される。慶大の奨学金担当者はこう語る。

「他大でも奨学金制度が充実する中で、慶大の進学には『お金について全く心配する必要がない』というメッセージを伝えたかった。学習意欲が高まることも期待しています」

 他大学でも制度は拡充している。愛知大の「愛知大学スカラシップ」の採用数は108人だったが、今年は200人に増加。関西外語大でも30人だった募集人員を50人に増やしている。

 また、新たに給付奨学金を設置する動きもある。東京理科大では昨年10月に給付型奨学金を創設し、今年の新入生から利用している。採用されると年40万円が給付され、4年制学部であれば4年間、6年制であれば6年間受け取れる。給付を受ければ、大半の学部で国立大の授業料に近い水準にまで下がる。岡村総一郎副学長は導入の背景についてこう説明する。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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