帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
写真はイメージです (c)朝日新聞社
写真はイメージです (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「瞑想と認知症の予防」。

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【ポイント】
(1)瞑想とは目を閉じて静かに考えること
(2)瞑想は脳幹網様体を活性化し認知症予防に
(3)心を虚空に向かって無限に拡げる

 瞑想というと仏教では禅宗の座禅、キリスト教では修道院での祈りといったように、宗教体験と結びつけて考えがちです。でも、辞書をひいてみると、宗教とは無関係に説明されています。

「目を閉じて静かに考えること。現前の境界を忘れて想像をめぐらすこと」(広辞苑)

 ある大手の商社マンに聞いたのですが、中近東の砂漠地帯の国に駐在中、暑くて何もする気にならず、仕事もそれほど忙しくなかったので、ひたすら瞑想にふけっていたそうです。毎日、ぼんやり砂漠を眺めていたのでしょうか。そうしたら、すこぶる身心の状態がよくなったというのです。

 わたしの病院の気功道場のメニューにも瞑想の時間があります。火曜日の朝7時半からです。もともと気功の「元極学」の時間だったのですが、いまは元極学を離れて行うようになりました。

 出席者は胡座(あぐら)、半跏趺坐(はんかふざ)、正座など思いおもいの方法で坐って、目を閉じて全身をリラックスさせます。元極学の音楽をバックに20分間、瞑想にふけるのです。各自がそれぞれのやり方で瞑想するのですが、大事なのは、吐く息で体内の気を天(虚空)に手渡し、吸う息で天の気をいただくことです。これを数回でもできれば、瞑想の価値があります。

 さて、それでは瞑想と認知症予防の関係はどうなるのでしょうか。

 瞑想は身体を動かすことをやめ、視覚、聴覚などの五感の働きを静めます。さらに言語、理解、判断などの知的活動も停止の方向に持っていきます。

 これは、大脳と小脳の働きをなくすということなのです。同時に脳幹の二つの神経路の働きも必要最小限になります。この神経路とは、一つは大脳の運動中枢の命令を手足に伝える下行性神経路。もう一つは、これとは逆に手足や内臓からの知覚を大脳に伝える上行性神経路です。つまり、瞑想とは脳と身体のつながりを最小限にする行為なのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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