それは、マスク姿です。日本ではそこらじゅうでよく見かけるマスク姿ですが、女性の使い方に特徴があるようです。

 最近の女子大生は、朝化粧をする時間がなかったからと、マスクで顔を隠して授業に出ることもあるそうです。台湾でも普段の生活にマスクがよく使われるため、カラフルなファッションアイテムのようなマスクもあるそうです。

 しかし、マスク姿は欧米人には忌避されます。欧米では、そもそも相当重病でないと、マスク姿で病院の外を歩く習慣がないそうです。

 ではなぜ、欧米人はマスクはNGでもサングラスを許容するのでしょうか。不思議に感じませんか? まさしくそれが、文化差による「すれ違い」なのです。

 つまり前述の研究から示されたように、口元で表情を伝える欧米人は、肝心な口元を隠されたマスク姿を嫌っているのかもしれません。いずれも眼球運動を調べて初めてわかったことですから、顔の特定の部分への注目は、実験場面でも日常場面でも無意識に行われるのです。ですので、本人にも、嫌な理由は気づかないのです。研究によって初めてその仕組みがわかったのです。

 ところで、サングラスを忌避して口元を隠す日本ですが、意外にも遠く感じられるイスラムと、顔隠しの共通性がみられそうです。東と西に離れていても、同じアジア文化ということでしょうか。厳格なベール(ニカーブ)でも目だけを見せたり、古くはアラビアンナイトでは目元を出して口元を隠したりしています。とりあえず目だけは見せるということです。

 マスク姿の女子大生もきっと心のどこかで、「目だけ見せればいいじゃん!」という線引きがあるのかもしれません。その線引きは私たちアジア人に共通した感覚で、だからこそ「風邪でもないのにマスク姿ですか」と笑いながらも許すところがあるのでしょう。

 逆に目を見せないサングラスは授業を受けるのにはNGです。なにを考えているかわからないし、教師の側からすれば馬鹿にされている気がする、そういった共通認識が日本人にはあるように思えます。