日本の研究は瀕死状態か 前川喜平が「30年先には…」と危惧 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

日本の研究は瀕死状態か 前川喜平が「30年先には…」と危惧

連載「前川喜平の”針路”相談室」

このエントリーをはてなブックマークに追加
前川喜平週刊朝日#前川喜平
写真はイメージです (c)朝日新聞社

写真はイメージです (c)朝日新聞社

 そんな中で、急速に増えているのが、防衛省が大学や企業に研究資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」です。今年で4年目を迎えますが、初年度が3億円なのに対し、今年度は101億円と、ものすごい増え方をしている。だからお金に困った研究者は、軍事転用できる研究に流れてもおかしくない。軍産学複合体の形成につながる非常に危険な傾向だと思います。

 今、社会は「競争させて評価すると結果を生む」という成果主義的な考え方に支配されている気がします。確かに人間も動物なので人参を目の前にぶら下げられれば走り、市場原理に任せたほうが低価格で質のよいサービスが生まれることもあるでしょう。しかし、多くの若手研究者は競争的資金で任用されるようになっているため、資金が切れる頃には次のポストを探さなければならなくなっています。これでは研究に没頭することができず、研究者として成長することもできません。30年先には、「10年も日本人のノーベル賞受賞者が出てない」ということになりかねない。

 大学も経済成長の役に立たなければならないという考え方が社会に蔓延しています。でも、そもそも学問は、見返りやリターンを求めるようなものではない。真理を求める知的活動です。生命や宇宙の根源を探るような研究も必要なのです。

 本当の成長を考えるなら、国は大学の自由な研究環境は守るべき。ただ、今の状態を許してしまっている国民にも問題があります。私たちは今一度、大学や学問のあり方を議論して、それを実現できる政府を選び直すべきだと思います。

週刊朝日  2018年11月2日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい