「歯ぎしりがうるさい。なんとかして!」
家族からそう責められている人は少なくないでしょう。この歯ぎしり、どうやったら治るのでしょうか? 放置しておくと何か問題はあるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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歯ぎしりは子どもから大人まで、あらゆる年齢の人に起こる症状(習癖)です。動物にもあるといわれますが、わが家でも飼っている犬が歯ぎしりをしているのを聞いたことがあります。
広い意味での歯ぎしりのことを専門的にはブラキシズムといいます。ブラキシズムには(1)グラインディング(主に寝ている時に上下の歯をこすりあわせる。これを一般的に歯ぎしりということが多い)(2)クレンチング(上下の歯をかみしめる)(3)タッピング(上下の歯をぶつけ合って、カチカチと鳴らすような音を出す)の三つのタイプがあります。ブラキシズムの出現頻度(発生率)は夜間で8~16%、昼間も含めると8~34%という報告もあります。
歯ぎしりの原因については、ストレス発散のための生理現象という説、かみあわせの悪さによるものという説など複数の考え方がありますが、明確にはわかっていません。
ただし、毎日のように起こる歯ぎしりは治療をしたほうがいいということは、断言できます。これは「一緒に寝ている家族に迷惑がかかるから」ではありません。
事態はもっと深刻で、歯ぎしりを放置しておくと歯や歯の土台となる歯槽骨(顎の骨)がダメになり、最悪の場合、歯を失うケースも出てくるからです。
歯ぎしりは歯を強くこすりあわせることで起こります。歯ぎしりの習慣がある患者さんご本人に自覚がなくても、歯科医師が口の中を見れば一目瞭然です。力がかかっている歯が削られ、異常に減っているからです。
なかには歯の白い部分のエナメル質が削られ、内側の茶色っぽい象牙質が露出している人も。前歯が歯ぎしりで半分くらいまで短くなっている人もいます。