歯を削られるときに発生する「キーン」という音。あの音を聞くと、「歯が痛くなりそう」「むし歯治療の嫌な思い出がよみがってくる……」という声も聞きます。「あの独特な音」の正体は何でしょうか? 音を抑えてもらうことはできるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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歯科医院に行くと聞こえる「キーン」という音の正体は「エアタービン」という歯を削るための機器です。
人間のからだの中で一番硬いのは歯の表面のエナメル質です。これを削るために、歯より硬く、地球上で最も硬い材質であるダイヤモンドを使い、高速で回転させて歯にあてて削るのがエアタービンです。
もう少し詳しく説明すると――エアタービンの先端部分につけるのは、ダイヤモンド粒子のついた最大径0.9ミリの金属の棒(ダイヤモンドバー)です。
削る部分にこのバーの先端をあて、スイッチを押すと高圧で圧縮された空気がホースを通じて、ダイヤモンドバーまで一気に送り込まれてきます。その圧力でダイヤモンドバーは1分間に30万~40万回転というものすごい速度で回転を開始し、歯が削られます。
そして、このときに出てくる圧縮された空気の音があの「キーン」なのです。
エアー(空気)ではなく、モーター(電気)でバーを回転させれば、音はもっと静かになります。しかし、それでは30万~40万回という回転数は実現できません。つまり、エアタービンでないと歯が十分に削れないのです。
もっとも、昔のエアタービンに比べれば音はずいぶん、静かになっています。また、歯科医院にはエアタービンのほかにも、エナメル質の下にある象牙質を削るマイクロモーター機器や入れ歯を削るエンジンと呼ばれる機器、口の中の唾液や水などを吸引するバキュームなどさまざまな機器がありますが(これらの切削器具はモーターで作動しており、エアタービンよりももともと静かです)、最先端のものはいずれも音や振動が静かになっています。