若林健史(わかばやし・けんじ)/歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演
若林健史(わかばやし・けんじ)/歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演
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「エアタービン」という歯を削るための機器。操作で水を出すこともできる(※写真はイメージです)
「エアタービン」という歯を削るための機器。操作で水を出すこともできる(※写真はイメージです)

 歯を削られるときに発生する「キーン」という音。あの音を聞くと、「歯が痛くなりそう」「むし歯治療の嫌な思い出がよみがってくる……」という声も聞きます。「あの独特な音」の正体は何でしょうか? 音を抑えてもらうことはできるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。

*  *  *

 歯科医院に行くと聞こえる「キーン」という音の正体は「エアタービン」という歯を削るための機器です。

 人間のからだの中で一番硬いのは歯の表面のエナメル質です。これを削るために、歯より硬く、地球上で最も硬い材質であるダイヤモンドを使い、高速で回転させて歯にあてて削るのがエアタービンです。

 もう少し詳しく説明すると――エアタービンの先端部分につけるのは、ダイヤモンド粒子のついた最大径0.9ミリの金属の棒(ダイヤモンドバー)です。

 削る部分にこのバーの先端をあて、スイッチを押すと高圧で圧縮された空気がホースを通じて、ダイヤモンドバーまで一気に送り込まれてきます。その圧力でダイヤモンドバーは1分間に30万~40万回転というものすごい速度で回転を開始し、歯が削られます。

 そして、このときに出てくる圧縮された空気の音があの「キーン」なのです。

 エアー(空気)ではなく、モーター(電気)でバーを回転させれば、音はもっと静かになります。しかし、それでは30万~40万回という回転数は実現できません。つまり、エアタービンでないと歯が十分に削れないのです。

 もっとも、昔のエアタービンに比べれば音はずいぶん、静かになっています。また、歯科医院にはエアタービンのほかにも、エナメル質の下にある象牙質を削るマイクロモーター機器や入れ歯を削るエンジンと呼ばれる機器、口の中の唾液や水などを吸引するバキュームなどさまざまな機器がありますが(これらの切削器具はモーターで作動しており、エアタービンよりももともと静かです)、最先端のものはいずれも音や振動が静かになっています。

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耳栓やイヤホンで紛らわすことも…