福井県鯖江市の上水道タンクに描かれた視力検査の「C」。見え方は年齢を超えた共通の関心事だ (c)朝日新聞社
福井県鯖江市の上水道タンクに描かれた視力検査の「C」。見え方は年齢を超えた共通の関心事だ (c)朝日新聞社
矯正視力の状況と見え方、生活不自由度 (週刊朝日2018年10月5日号から)
矯正視力の状況と見え方、生活不自由度 (週刊朝日2018年10月5日号から)

 メガネは目の状態に合わせて、作り替えるのが“正解”。老眼は40代から始まり、50代は進行が早い。高齢者は転倒予防のためにも足元がしっかり見えることは重要だ。人生100年時代、健康寿命とQOL(生活の質)の維持に、老眼鏡は5回くらい買い替えても損はない。

【図表で見る】矯正視力の状況と見え方、生活不自由度

「私も50代になってから四つぐらい遠近両用メガネを替えましたね」

 こう打ち明けるのは、『人生が変わるメガネ選び』などの著書がある梶田眼科(東京都港区)院長の梶田雅義さん。メガネを替えた理由は、いたってシンプル。「見え方が悪くなったから」だ。

「個人差はありますが、50代から60代にかけて見え方が大きく変わり、遠視、いわゆる老眼が強くなっていきます。そのつど見え方に合わせたメガネを作ることが大事なんです」

“メガネは一生モノではない”というのだ。

 老眼とは、カメラのレンズのような役目を持つ水晶体が、加齢で柔軟性を失い、手元のピントが合いにくくなった状態のこと。水晶体の厚みの調整で重要な役割を担うのが、水晶体とつながっている「毛様体筋」や「チン小帯(水晶体と毛様体筋を結ぶ線維の束)」といった組織だ。

「この毛様体筋やチン小帯が緩んだり緊張したりすることで、柔軟性を持つ水晶体が厚くなったり薄くなったりします。ところが、加齢で水晶体が硬くなると、その分これらの組織が頑張らなければならなくなる。おそらく、50代ぐらいになると、頑張っても水晶体が厚くならないため、老眼が一気に進むのだと思います」(梶田さん)

 老眼は単に手元が見えにくくなるだけではない。目の奥の痛みや疲れ、肩こり、夕方になって薄暗くなると見えにくさが増すといった症状も生じてくる。放置していると自律神経に影響をもたらし、体調を崩すこともある。

「老眼の進行を考えると、最低でも10年間ぐらいで3回はメガネを作り替えないと、快適な見え方が維持できません。逆に老眼対策をしっかり行って、視力矯正ができていれば、いくつになっても本も新聞も読むことができます」(同)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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