「罹患率が減っていることが影響しているのはもちろんですが、早期の胃がんで見つかる人が増えていることも、死亡率の減少につながっていると考えられます。背景にあるのは、胃がん検診の普及や内視鏡検査の進歩です。また、10年ほど前から一般的になってきた再発予防のための薬物療法の影響もあるかもしれません」

 罹患率の減少は、食品保存の技術が向上したこと、塩分摂取量が減ったことなどが影響していると考えられている。また、ピロリ菌感染率の低下により、2030年ごろには胃がん罹患者数は、大幅に減少することが予想されている。

■早期の5年生存率は97%を超える

 進行胃がんの再発は治療後1~2年のうちに起こることが多いため、5年経って再発がなければ治ったと判断できる。05年から07年の間に胃がんと診断され、なんらかの治療を受けた人を対象とした全国がん(成人病)センター協議会の調査では、胃がんの5年生存率は他のがんに比べて高く、すべてのステージを合わせて73.1%だ。ステージIであれば97.3%、ステージIIは65.7%、ステージIIIは47.2%。16年に発表された10年生存率もステージIは93.9%と高く、早期胃がんはほとんど治る病気であることがわかる。

 胃がんにはさまざまな性質や特徴があり、生存率は部位や悪性度などによっても変わってくる。例えば胃底部にできたがんは、胃体部や幽門前庭部にできたがんよりも5年生存率が低く、噴門部のがんはさらに下がる。胃底部にできたがんは検診で見つかりにくいこと、さらに噴門部のがんは転移しやすいことが原因と考えられる。スキルス胃がんは進行したがんの形態で、発見時すでに腹膜転移を起こしていることが多く、手術をしても再発しやすい。

 ただし、こうしたがんも早期に見つかれば、それだけ生存率は高い。

(文/中寺暁子)

※週刊朝日MOOK『よくわかる!がん最新治療シリーズ 胃がんと診断されました」から