津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
集会で報道陣にブーイングをするトランプ大統領の支持者ら。米国では大統領の政策を巡り対立が深まっている (c)朝日新聞社
集会で報道陣にブーイングをするトランプ大統領の支持者ら。米国では大統領の政策を巡り対立が深まっている (c)朝日新聞社

 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。ソーシャルメディアが人の思考などへ与える影響について解説する。

【集会で報道陣にブーイングをするトランプ大統領の支持者ら】

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 ソーシャルメディアでは自分と似た考えを持つ人とつながることが多い。その結果、自分と同じような意見や好ましいと思えるものばかりを目にする現象「フィルターバブル」が起きる。そのような閉じた空間のなかにいると「みんな自分と同じように考えている」という確信を強め、もともとの信念や態度、価値観が増幅・強化されると言われている。これがいわゆる「エコーチェンバー現象」だ。

 このようなソーシャルメディアの環境が、もともと持っている政治的な立場をより過激化することで、ヘイトスピーチや人種差別的言動が促され、政治的・社会的分断が進んでいるとの指摘もある。

 ソーシャルメディアは社会の分断を加速する──この現象を調査した米デューク大学らの研究グループの報告が8月28日、公開された。

 調査では日常的にツイッターを利用する民主党支持者、共和党支持者それぞれに、対立する政党の大統領候補者(トランプ大統領やヒラリー・クリントン氏ら)や政治家、オピニオンリーダーらのツイートを1日に24回リツイートするボットを1カ月間フォローしてもらい、政治的立場の変化を検証する実験を行った。つまり、保守層がリベラルな意見に、リベラル層が保守的な意見に毎日触れることで、考え方に変化が生じるかを見る実験デザインだ。

 果たして実験の結果はどうだったか。継続的に対立意見に接したとしても、自らの政治的立場を変えることはなく、保守層ではむしろ保守的傾向が強化されたという。研究グループは「ツイッターなどのソーシャルメディアで対立する政治的意見を紹介する試みは、効果がないだけでなく、逆効果になる可能性がある」と結論づけている。

 確かに、自分と異なる意見をツイッターで目にするだけでは、その価値観が受け入れられるとは考えにくい。あらゆる社会問題が複雑化し、それぞれに様々な背景や文脈を抱えている。しかし、140字(英字で280字)という制限のあるツイッターでは、単純でわかりやすく何かを断じる意見に共感が集まり、背景や文脈が寸断されて感情だけが独り歩きしやすいという問題がある。

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津田大介

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津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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