メタボを予防できれば、聞こえに関する機能を正常に働かせ続けることができる(※写真はイメージ)
メタボを予防できれば、聞こえに関する機能を正常に働かせ続けることができる(※写真はイメージ)

 加齢によって聞こえが低下してしまうと完全には治ることはありません。そのため、日頃から予防を心がけることが大切です。聞こえを悪化させない生活習慣にはどのようなものがあるのでしょうか。週刊朝日ムック『「よく聞こえない」ときの耳の本』では、山口大学大学院耳鼻咽喉科学准教授の菅原一真医師に、耳にいい生活習慣を聞きました。

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 高齢になると加齢性難聴の割合は増加しますが、高齢者の聞こえの状態には個人差が大きく、遺伝や環境、生活習慣によるものが大きいとされています。

 加齢性難聴の予防について研究をおこなっている山口大学の菅原一真医師は「加齢性難聴発症の最大のリスク因子はメタボリック症候群」と話します。糖尿病、脂質異常症、肥満を特徴とするメタボリック症候群は動脈硬化や炎症を促進させ、体内の酸化ストレスの原因となり、過剰に産生された活性酸素はミトコンドリアDNAを損傷します。ミトコンドリアは、内耳の有毛細胞に多く含有するため、有毛細胞の障害に影響し、加齢性難聴を招くと考えられます。

「糖尿病患者に難聴が多いことは昔から知られていました。糖尿病・高血圧症などの生活習慣病もメタボがきっかけとなって引き起こされますが、加齢性難聴もメタボなどにより細胞が老化する過程で、聞こえをつかさどる内耳の有毛細胞がアポトーシス(死)に導かれ、機能障害が生じて発症すると考えられています」(菅原医師)

 菅原医師によると、その予防策として有効なのがカロリー制限。適切なカロリー制限によって血糖をコントロールし、メタボを予防できれば、内耳の有毛細胞障害を引き起こすことなく、聞こえに関する機能を正常に働かせ続けることができるといいます。

「食物繊維を積極的に摂取する、主食よりも野菜類を先に食べる、なども血糖コントロールのためにはいい習慣です。ウォーキングなど適度な運動を日々の生活に取り入れることも大切です」(同)

■抗酸化作用のあるサプリも加齢性難聴予防には有効

 頭ではわかっていてもカロリー制限や運動が続かない……という人には抗酸化作用のあるサプリメントで補うことも有効です。

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