「動物による研究ではありますが、抗酸化物質はミトコンドリアDNAを損傷させる酸化ストレスを抑制し、内耳の有毛細胞の障害を防ぐため、加齢性難聴発症を抑制できる可能性があります」(同)

 いわゆるアンチエイジングに効く抗酸化作用のあるサプリメントは昨今、数多く販売されていますが、内耳への効果や毒性についてはまだほとんど明らかにされていません。現時点で耳にいい抗酸化物質として研究報告があるものに、αリポ酸やアセチル―L―カルニチンなどがあります。

「サプリメントは医薬品のように根拠となる論文も少ないため有効性も明確ではないですが、逆に医薬品では対応できない症状を抑える可能性もあります。上手にとり入れてほしいと思います」(同)

■長寿遺伝子を活性化させるカロリー制限の習慣

 耳にいい生活習慣では「質のいい睡眠」も大切です。睡眠障害も加齢性難聴の発症につながる糖尿病発症のリスク因子。質のいい睡眠を実現させるためには、日々の生活のなかに必要な睡眠時間を確保すること、眠りやすい寝室環境を整えることも重要となるでしょう。菅原医師はこのほか、「睡眠時無呼吸症候群」についても加齢性難聴のリスク因子と言及します。

「睡眠時無呼吸症候群も中等症以上になると、心血管系疾患のリスク因子なので糖尿病の合併率も高まります。加齢性難聴を予防するためにも早めに治療しましょう」

 また、長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)を活性化させるような生活をすることも加齢性難聴予防になるといいます。長寿遺伝子はどうしたら活性化するのでしょうか。

「やはりカロリー制限によって長寿遺伝子が活性化することがわかっています。食事は少し物足りないかな、という程度に抑えると、長寿遺伝子が活性化し、老化の進行が遅れ、生活習慣病や老化に伴うさまざまな疾患にかかりにくくなります。よって、加齢性難聴にもなりにくくなるのです」(同)

 このほか、老化を進めるとされる体内のAGE(終末糖化産物)をためないことも老化に伴う疾患にかかりにくくなるためには重要と、菅原医師は指摘します。

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6つの生活習慣の見直し