
「梅はその日の難のがれ」
朝食べると病気にならないと言い伝えられるほど健康効果があるとされる梅干し。汗で流れ出たミネラルを補おうと、熱中症対策で摂る人も多い。酷暑のこの夏は空前の売れ行きで、品薄で欠品が続く販売店も出るほど。梅干しメーカー担当者は「こんなことは初めて」と話す。
もともと夏は梅干し需要がピーク。気温と売れ行きがリンクしている商品だ。今年は猛暑に加えて、夏本番を迎える7月初旬にテレビ番組が梅干しの健康効果を取り上げて人気に火がついた。
バラエティー番組「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)で、梅干しは熱中症予防が期待でき、脂肪燃焼効果がありダイエットに利用できると紹介。さらに、食中毒の原因菌の増殖を防ぐ効果や、胃がん発症に関係する菌を抑制したり、血管収縮のホルモンの働きを調整し血圧上昇や動脈硬化の発症を抑制したり、カルシウムを吸収しやすくしたりとさまざまな働きがあると説明された。
メーカーは軒並み残業・休日出勤で対応。前年比で5割増、7割増といった増産・出荷が続いている。あるメーカーの担当者は「受注に対して生産が追い付かない状況。受注を止め、取引先に割り当てて出荷している。メーカーによっては、一部の得意先に出荷を限定しているところもある」というほど。実際にはメーカーから問屋を通して販売店に卸すが、問屋が商品の割り振りをしており、別のメーカー担当者は「通販を見るとそうでもないが、量販店向けには卸業者が在庫を吐き切った感じがする」とも話している。
梅干しの原料の梅の実の収穫は年1回で、6月中旬から7月中旬にかけて。洗浄・選別して、1カ月ぐらい塩で漬け込む。それから天日干し。さらに入念な洗浄、品質チェックを経て10日間ぐらい味付けのため漬け込む。こうしてようやく商品となる。
つまり、いま出回っている商品は、昨年収穫したもの。今年は梅の実が豊作だったが、梅干しになって店頭に並ぶのは9~10月ごろだ。メーカーでは、原料の梅の実の在庫があったかどうかで明暗が分かれた。原料在庫がなければ特需があっても増産のしようがないからだ。