「大塚家具は無借金経営で知られていますが、今期、約20年ぶりに金融機関から資金調達していたことが明らかになりました。借入れ額は数億円と見られますが、すでに返済しています。無借金のプライドからか、頑なに銀行から借りてこなかったのですが、そこから転換したようです。大塚家具は複数の銀行から50億円の融資枠も持っています。銀行も経営に口出しすることになりますし、資金調達により抜本的な再建計画を立てる道も見えてきました。いきなり倒産という事態は、ひとまず遠のいたと言えます」

 久美子氏は、創業者で前会長の父・勝久氏と経営方針をめぐって対立。15年の株主総会で親子のプロキシファイト(委任状争奪戦)で久美子氏が勝利し、勝久氏は会社を去った。

 父を制した久美子氏は、旧来路線からの転換に着手。もともと会員制で、来店した客に営業担当者がつきっきりで案内する高級路線を取っていたが、誰でも入店できるようにした。中価格帯にシフトし、低価格路線のニトリやイケアに対抗しようとした。

“親子ゲンカ”によってブランドイメージが悪化し、今日の凋落を招いたとも指摘される。

 だが、経済アナリストの森永卓郎氏はこう語る。

「“親子ゲンカ”の影響はほとんど関係ありません。久美子社長の『カジュアル路線』に転換してニトリやイケアと競合するところに参入しても、結局、需要がなかったというだけのことです。父親の路線には独自性がありましたが、それをすべて否定してしまった。久美子社長の路線で商売するのなら、まずパイロットの小さな店舗でも作って、本当にマーケットがあるかどうか確かめてからやるべきだったと思います。いきなり社運を賭けて全面転換してしまうから、失敗した時に現在のような事態に陥るのです」

 大塚家具に再建の道は残されているのだろうか。森永氏の見方は厳しい。

「おそらくTKPに買収されて、大塚家具は最終的に消滅してしまうのではないか。TKPは自社の会議室で使うオフィス家具などに特化して、家具部門は大幅に縮小することになるでしょう」

 久美子氏が思い描いたビジネスモデルでは失敗するということを、実証しただけの3年間だったということか。(本誌・亀井洋志)

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