決勝トーナメント進出を決め、サポーターに挨拶するポーランド戦直後の日本代表(c)朝日新聞社
決勝トーナメント進出を決め、サポーターに挨拶するポーランド戦直後の日本代表(c)朝日新聞社

  ワールドカップ(W杯)ロシア大会終了まで7回にわたってお届けする、スポーツライター・金子達仁さんのサッカーコラム。第4回は決勝トーナメントのベルギー戦の前に執筆した「日本チームのイメージ」について。

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 何とまあ、毀誉褒貶と浮き沈みの激しいチームであることか。

 大会前の評判は最悪。それがコロンビア戦の勝利で肘の関節が外れるんじゃないか、と心配になるほどの勢いで世間は手の平を返し、関節の痛みが癒えるまもなく、1次リーグ最終戦の後にはファンを二分する大論争を巻き起こした。

 確かに、ひどい試合ではあった。

 いまから36年前、スペイン・ワールドカップの1次リーグ最終戦で、勝てば2次リーグ進出が決まる西ドイツと、負けても2点差以内ならば同じく2次リーグ進出が決まるオーストリアが対戦したことがあった。

 前半10分に西ドイツが先制すると、そこで実質的に試合終了となってしまったこの一戦は、今なお『ワールドカップ史上最悪の試合』と呼ばれている。2018年6月28日のボルゴグラードで日本とポーランドがやったのは、それを超えるほどではないものの、『ワールドカップ史上2番目にひどい試合』と評されても仕方のないものだった。

 わたしはだから、大いに失望し、恥の意識を覚え、ちょっぴり誇りに感じ、そして密かに喝采した。

 コロンビア戦の快挙と、セネガル戦の諦めない姿勢によって、日本サッカーに対する世界の好感度は、飛躍的にあがっていた印象がある。だが、あまりにも醜悪な最終戦の内容によって、そのかなりの部分には泥が塗られた。ああいう戦い方をしておいて「これがルールなんだから仕方ないだろう」と開き直るふてぶてしさは、わたしにはない。

 ただ、日本を決勝トーナメントに導いてくれたのは、イエローカードの少なさだった。日本人らしいクリーンな戦い方が、時として南米出身者から「何の役にも立たない」と揶揄されたこともあったフェアプレーの精神が、土壇場で自らを助けたのである。この教訓は、今後の日本にとって素晴らしい財産となる。実に誇らしいことではないか。

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