従来最初に選択されることが多かったのがLAMAで、効果が十分に得られないときにLABAを追加するというケースが一般的だった。作用の違う薬を併用することで、気道をより広げることが期待できる。

 LAMA・LABA配合薬も発売当初は、LAMA単剤で十分な効果が得られなかった場合や重症患者に限り、使用されてきた。しかし最近は、軽症でも最初から配合薬を使用する傾向があるという。

「例えば高血圧の薬は効きすぎると血圧が下がりすぎる弊害がありますが、気管支拡張薬の場合は効きすぎて困ることがありません。このため、最初から効果の高い薬を使用するほうが、患者さんも効果を実感でき、吸入治療を続けやすいと考え、第一選択薬として使用されるケースが増えてきたのです」(玉置医師)

 配合薬は吸入操作が1回ですむため患者の負担が軽くなることもメリットだ。

 COPDの患者は、気管支ぜんそくが併存している場合も少なくない。この場合は、LAMA、LABAのほかにさらに「吸入ステロイド薬(ICS)」を追加する「トリプルセラピー」という治療がおこなわれる。現在はLAMA・LABAの配合薬に吸入ステロイド薬を追加する方法とLABAと吸入ステロイド薬の配合薬にLAMAを追加する方法があるが、今後は三つの薬を組み合わせた配合薬も登場する予定だという。

 COPDの薬は、正しく吸入することもポイントだ。使い方を誤ると十分な効果を得られないため、医師や看護師の前で吸入し、やり方が正しいかどうか、確認してもらうことが不可欠だ。

「COPDは進行すると薬物治療の効果が得にくく、在宅酸素療法が必要になります。階段や坂道を上ったときに今までに感じなかったような息切れがある、咳が2カ月以上続くといった症状があれば医療機関を受診し、早めに治療を開始することが大切です」(同)

 COPDで問題となるのが「増悪」だ。風邪やインフルエンザなど呼吸器の感染症を機にCOPDの症状が一時的に悪化し、症状が全身におよぶ状態を指す。血液中の酸素不足により呼吸不全で生命が危険になることもある。また、COPDは糖尿病や心臓病など併存症がよく見られるが、増悪を起こすと併存症も悪化することがあり、さらに重症となる。重症化すると、息切れや咳、痰の症状が続き外出もままならない状態となり、運動能力や骨格筋の筋力低下を起こす。高齢者の場合、そのまま寝たきりになることもある。

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