圧倒的不利の予想を覆し、2-1のスコアで勝利した6月19日のコロンビア戦。西野朗監督は、選手と喜びをわかちあった(c)朝日新聞社
圧倒的不利の予想を覆し、2-1のスコアで勝利した6月19日のコロンビア戦。西野朗監督は、選手と喜びをわかちあった(c)朝日新聞社

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会終了まで7回にわたってお届けする、スポーツライター・金子達仁さんのサッカーコラム。第3回は「日本が取り戻した『自信』と『誇り』」について。

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 初戦の相手は南米代表だった。日本は世界を驚かせる番狂わせを演じて見せた。だが、続く第2戦のアフリカ代表に完敗し、最終戦は東欧の古豪に完勝したものの、得失点差で決勝トーナメント進出を逃すことになった。

 それが、22年前の西野監督に率いられた、アトランタ・オリンピックの日本代表だった。

 前園真聖がいて、中田英寿がいて、川口能活がいて、いまは亡き松田直樹がいた、しぼみかけていたJリーグとサッカーの人気に再び火をつけてくれた、いまとなっては伝説的なチームだった。

 だから、ハリルホジッチの後任として西野朗の就任が決まったときから、「何かが起こるかもしれない」という胸騒ぎはあった。今回も、初戦は南米代表のコロンビア、第2戦はアフリカ代表のセネガル、そして最終戦は東欧の古豪ポーランドと、グループリーグの組み合わせは、アトランタのときとあまりにも似通っていたからである。

 さて、この原稿はコロンビア戦の勝利の翌日に書いている。従って、読者のみなさんは目撃しているセネガル戦の結果をわたしは知らない。いまできるのは、第2戦の結果まで22年前をなぞったりしないよう祈ることだけである。

 もっとも、マイアミでブラジルを倒したときと同じく、安直に「奇跡」という言葉で語られることになりそうなコロンビア戦は、しかし、断じて奇跡などではなかった。

 幸運と、相手の致命的なミスと、GK川口の神がかり的な守備という、三つの条件が最高の形で組み合わさった、再現性のほぼない勝利がアトランタのブラジル戦だとしたら、今回のコロンビア戦は日本と西野監督が自力で引き寄せた部分も大きかったからである。

 幸運に恵まれなかったわけではない。開始早々に相手MFが致命的なミスを犯したこと、警告止まりの可能性があったプレーに主審がレッドカードを出したこと、大黒柱のハメス・ロドリゲスが先発できない体調であったらしいこと。日本にとって幸運な要素がいくつかあったことは否定しない。

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