約2年ぶりに13枚目となるオリジナル・アルバムを出したaiko。全国45公演のツアーも開催
約2年ぶりに13枚目となるオリジナル・アルバムを出したaiko。全国45公演のツアーも開催
ヒットシングル「予告」や、映画「聲の形」の主題歌「恋をしたのは」も収録した『湿った夏の始まり』(ポニーキャニオン PCCA.15013)
ヒットシングル「予告」や、映画「聲の形」の主題歌「恋をしたのは」も収録した『湿った夏の始まり』(ポニーキャニオン PCCA.15013)

 デビュー20周年を迎えるaikoのニュー・アルバム『湿った夏の始まり』が“濃く”て“熱い”。

【写真】aiko『湿った夏の始まり』のジャケットはこちら

 これまでのアルバムにも、『桜の木の下』(2000年)、『夏服』(01年)、『秋 そばにいるよ』(02年)、『May Dream』(16年)と、リリースする季節に合わせたタイトルが目立つ。

 aikoはこう話す。

“『夏服』からもう17年。今回、6月にリリースすることになったときに、ふと『夏服』の17年後を描きたい、『夏服』の後に私が過ごしてきた夏を描いたアルバムにしたいなって思ったんです”

 からりと晴れた夏の乾いた空気感ではなく、湿度が高く、汗がべっとりとまとわりつくような感覚を表現したのは、aikoのこだわりかもしれない。

 高校時代から作曲を始め、コンテストに出場してグランプリを獲得し、ラジオ番組のパーソナリティーなども務めた。インディーズで自主制作盤を出したあと、1998年にシングル「あした」でメジャー・デビューした。

 この98年には、前出とは別のコンテストでaikoと優秀賞を分け合った椎名林檎をはじめ、宇多田ヒカル、MISIA、浜崎あゆみ、モーニング娘。ら、後に目覚ましい活躍を遂げた女性ミュージシャンが続々とデビューしている。

 aikoは3作目のシングル「花火」(99年)で注目され、「カブトムシ」(同)、「ボーイフレンド」(00年)、「初恋」(01年)などが立て続けにヒット。アルバムは2作目の『桜の木の下』から前作まで、チャートの1、2位にランクされてきた。

 終わった恋の追憶、恋人との心の隔たり、恐れ、せつない思いや喜びを描いたラヴ・ソングが中心。軽快でポップな演奏をバックに、気負いのない歌唱を聴かせる。

 本作『湿った夏の始まり』について、本人はこう解説する。

“今回は、この言葉は強すぎるから使うのをやめようかな、とか思うこともなかったし、レンジを気にせずメロディを作ることもできたんです。その結果、歌うのが大変な曲が多かったりはしたんですけど、それがまたすごく楽しかったし、いつも以上に達成感を味わうこともできたんですよね”

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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