■いつ帰ったらいいのか?

 遠距離介護が始まってからも、土日より公的機関の開いている平日が望ましい。帰省すると家の片付けや買いものも含め、ヘルパーに日ごろお願いできない用事を頼まれるため、ゆっくり休んでいる暇はないようだ。とくに、今は介護する側も60代、70代と高齢化している。遠距離の場合、移動による体力的な負担も大きい。ここでも無理をしないことが大事だ。

「サロンに来る遠距離介護の家族の話では、実家に帰るのは1~2カ月に1回という人が多い。ただ、それは家庭の事情や介護の状況にもよります」(太田さん)

 中澤さんは「親の変化を知るには、月1ぐらいの帰省が望ましい」という。

「状況が安定しているときは頻繁に帰らなくてもいいと思いますが、こまめに電話などで連絡を取っておくことは必要でしょう。親の年齢が若ければ、スマホやタブレット型の端末でテレビ電話機能を使えるかもしれません」(中澤さん)

 また、ケアプランを変更するなどで、医療・介護に関わる人たちが集まる「サービス担当者会議」があるときは、帰省して参加したほうがいい。

■交通費はどうする?

 遠距離介護でたいへんなのは帰省の交通費。飛行機で行き来しなければならない場所であれば、その負担はかなりのものになる。

「どちらかというと、男性は自分で払い、女性は親に頼ることが多い。ですが、親に出してもらえるなら、そうしたほうがいいと思います」(太田さん)

 製薬企業のファイザーが2016年に実施した「介護の日 全国47都道府県“親子の介護予防ギャップ”意識調査」によると、自身の介護に関して、「不安や危機感を持っている」と回答した親世代(65歳以上の男女4700人)は、約5割。「子どもと自身の介護について話をした経験がない」は8割強だった。一方、「将来起こりうる親の介護に対し、危機感を持っている」と回答した子世代(65歳以上の親を持つ男女4700人)は7割強にも上った。

 遠方に住む子どもやその家族に介護をお願いする。そうなった場合、親はどんな心構えが必要なのだろうか。高齢者の生活問題を研究する第一生命経済研究所ライフデザイン研究部主席研究員の小谷みどりさんは、「まず、自分の老いや、昔より体力が落ちたことを受け入れること」とアドバイスする。

「それは、ヘルパーさんがキッチンに入るのをためらわない、ということです。身の回りのことができなくなったとき、外部の福祉サービスを受けられるのであれば、そこは任せたほうが家族も安心します。サービスを使うことで空いた時間を、夫婦や自分の楽しみのために使えばいいんです」

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