消えたと思い込んでいる人も 「ゴールデンカムイ」に学ぶアイヌの知恵 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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消えたと思い込んでいる人も 「ゴールデンカムイ」に学ぶアイヌの知恵

岩下明日香週刊朝日
主人公の杉元佐一とアイヌ民族の少女・アシリパ(c)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

主人公の杉元佐一とアイヌ民族の少女・アシリパ(c)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

アシリパが初めてみそを食べたシーン。茶色いみそは「オソマ(うんこ)じゃないか」といぶかしがっていたが、食べてみると「おいしい」と喜ぶコミカルなシーン(c)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

アシリパが初めてみそを食べたシーン。茶色いみそは「オソマ(うんこ)じゃないか」といぶかしがっていたが、食べてみると「おいしい」と喜ぶコミカルなシーン(c)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

シペ(サケ)を調理する一場面(c)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

シペ(サケ)を調理する一場面(c)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

野田サトルさん自画像(c)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

野田サトルさん自画像(c)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

作品のアイヌ語を監修している中川裕・千葉大教授

作品のアイヌ語を監修している中川裕・千葉大教授

 自然の恵みに頼って生きることは、不安定な生活を受け入れることでもある。サケは年によって川に戻ってくる量が大きく変わる。調理の場面で少女・アシリパが「川に鮭(さけ)が極端に少ない年は餓死するものが出た」と話しているように、今の「飽食の時代」とは価値観が異なる。

 アイヌにとって大切な概念が、作品のタイトルにも含まれている「カムイ」だ。通常、「神」や「精霊」などと訳される言葉だが、中川さんは一言では言い表せないという。

「動物や植物など自然界のすべてに魂があって、それをカムイと名付けている。船など人工物にも魂はあって、それがないとそもそも動かないと考えている。人間を取り巻くものすべてに、意思を持った霊魂があるのだ。カムイは霊魂として存在しているので本来は目に見えないが、人間と交流するために動物の毛皮など、それぞれの衣装を身につけて人間世界にやってくる」

 カムイは「環境」と言い換えることもできるという。取り巻く環境が人間と良い関係になっていれば、幸せに暮らせる。環境を破壊するようなことがあれば、環境のほうが腹を立て、人間はしっぺ返しを食らう。サケを粗末に扱ったり川を荒らしたりすると、カムイが怒ってサケが取れなくなり、人間がひもじい思いをする。

 身の回りの全てのものに敬意を払い感謝するカムイの概念は、いまの私たちも学ぶべきところが多い。様々な商品や情報があふれ、人間関係でも疎外感に悩む現代人にとって、アイヌの知恵は役に立つはずだ。

 ゴールデンカムイは、こうした知恵に触れられる貴重な作品となっている。ギャグも織り交ぜ楽しく読めることもあって、若者だけでなく年齢の高い層からも支持されている。週刊ヤングジャンプ編集部の大熊八甲さんはこうアピールする。

「冒険活劇や歴史浪漫、狩猟やグルメなど全部煮込んだ『和風闇鍋ウェスタン!』。どれもメインに成り得る食材を全部煮込んでまずくならないのは、野田シェフの腕が素晴らしいからです」

 アニメも戦闘シーンなど見どころたっぷりだ。声優らの華やかなイベントをネット中継で見た野田さんは、「もはや作品が別のものになって独り歩きしているような錯覚を覚えます」と感慨深げだ。

 作品には主人公を始め、筋肉美のキャラクターが登場する。連載が終わったら「ボディービルダーになろうと思っています」という野田さん。物語は現在「6合目あたり」で、今後もしばらくはアイヌの知恵を紹介してくれそうだ。(本誌・岩下明日香)

週刊朝日 2018年6月15日


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