「老いには老いの華がある」野村万作が「楢山節考」に挑む (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「老いには老いの華がある」野村万作が「楢山節考」に挑む

菊地陽子週刊朝日
野村万作(のむら・まんさく)/1931年生まれ。重要無形文化財保持者各個認定(人間国宝)、文化功労者。祖父・故初世野村萬斎及び父・故六世野村万蔵に師事。早稲田大学文学部卒業。「万作の会」主宰。現在に至る狂言隆盛の礎を築く。息子は二世野村萬斎(撮影/写真部・大野洋介)

野村万作(のむら・まんさく)/1931年生まれ。重要無形文化財保持者各個認定(人間国宝)、文化功労者。祖父・故初世野村萬斎及び父・故六世野村万蔵に師事。早稲田大学文学部卒業。「万作の会」主宰。現在に至る狂言隆盛の礎を築く。息子は二世野村萬斎(撮影/写真部・大野洋介)

 狂言不遇の時代があった。

 約60年前、20代だった野村万作さんは、能楽(能と狂言の総称)の中でも、とくに狂言が「ただ笑えればいい」と冷遇される風潮に、歯がゆさや悔しさを感じていた。今でこそ狂言は能楽としてユネスコの無形文化遺産にも登録され、日本を代表する伝統芸能として世界各地で上演されている。しかし当時は、新しいことに挑戦しようとする若手の提案は、明治生まれの古老たちによって、ことごとく拒まれたのだった。

「とはいえ、若い人にも興味を持ってもらわなければ、伝統芸能はいつか滅んでしまう。そのことを不安視した若手の狂言師として、同世代の脚本家や研究者と相談して、当時ベストセラーだった『楢山節考』を、狂言として上演することにしたのです」

 人間存在の深みを感じさせるテーマを、狂言の軽快さの中に落とし込ませるべく、老婆と老爺の“対比”を際立たせた。老爺は山に行きたがらず逃げ回り、老婆は自分から進んで山に向かう。その対比の中に、人間の滑稽さが浮かび上がるのだ。

「狂言『楢山節考』の導入部は子供たちが童謡を歌って踊ります。そこから、真ん中にいた老婆が、過去を回想していくという構成なのですが、これもうまくいったと思います。とくに狂言らしいのは、人間がカラスを演じるところです。カラスが、老婆の亡骸に、最後にそっと白い布をかぶせてあげる。その白い布は、雪を表しています。映画でも演劇でも歌舞伎でも、人間がカラスを演じることはない。そうやって、リアリズムの世界を超えていけるところが、能や狂言のユニークなところです」


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