
不動産投資ブームにはまった「サラリーマン大家」へのスルガ銀行(静岡県沼津市)の融資で、預金通帳などの改ざんが横行していた。犯罪同然の不正行為に手を染めた業者の一人が、資料改ざんの手口と業界の汚れた実態を赤裸々に明かす──。
「通帳、源泉徴収票、確定申告書、レントロール(家賃収入表)や賃貸契約書。頼まれたら何でも改ざんしましたよ。業界では『書き換え』と呼ぶ。お客さんに黙ってやることもある。何人やったか、細かいことはもう覚えてないね」
こう告白するのは、大阪市の不動産業者で30代のA氏。業者とはいっても宅建業の免許はなく、カモとなる客を見つけては不動産会社に紹介し、成約価格の1~2割を手数料として受け取る。専門学校を出て大阪の大手ワンルーム販売会社に就職し、辞めたあとは独立仲間と客や物件を融通し合っているという。
シェアハウス投資で賃料不払いのトラブルが続出したのを機に、スルガ銀で多額の融資を引き出すのに貯蓄や年収を水増しする不正が横行している実態が暴かれてきた。融資資料は業者を通じて提出されることが多く、客に黙って改ざんした事例も多い。ただ、改ざんはシェアハウスにとどまらない。物件数が多い中古1棟マンションへの融資でも蔓延(まんえん)していたのだ。
冒頭のA氏は、独立してまもなく資料改ざんに手を染め始めた、と説明する。
「改ざんのやり方は3、4年前、前の職場の先輩に教わった。自分はパソコンが不得意だが、預金通帳ならスキャンして画像修正ソフトで数字を切り貼りするだけ。電卓で利息も計算して足していくから、慣れても1ページ30分くらいかかる地道な作業ですよ」
最初は新築ワンルーム投資で、収入を増やせば2室目が買えるような客の収入を水増しすることから始まった。このときは複数の地銀、ネット銀などにも改ざん資料を出したが、客の名前を間違えて「源泉徴収票の名前を間違うわけないやろ!」とむちゃくちゃ怒られたこともあったという。