とんでもない業者は、東京都内にもあった。

 赤坂に最近まであったW社で昨年秋、社長を含む従業員4人がこつぜんと姿を消した。残る社員が机やパソコンをあさると、出るわ出るわ、画像編集ソフト「フォトショップ」で偽造された通帳コピーや源泉徴収票、三十数室中5室しか入居者のいない物件を「満室」と偽るレントロールまであった。病院の印鑑が複数あり、不健康な客の検査の数値をいじる「診断書」も精巧につくられていた。

 事後処理にあたる現社長によると、2016年末から昨年9月の間、計22棟を売った客12人分の融資資料で偽造や改ざんが確認された。スルガ銀の仙台や首都圏など計6支店が融資を実行。行員から「自己資金を通帳原本で確認することが融資条件」と記したメールが送られていたこともわかった。

 現社長はすぐにスルガ銀の本店や東京支店に駆け込んで実態を伝え、通帳原本を確認しなかった審査態勢の不備も訴えた。出迎えたスルガ銀幹部は「調べてきちんと対応する」と応じたが、不正資料でも平気で通すガバガバの融資態勢が見直されるのは数カ月も先のことだった──。

 シェアハウス「かぼちゃの馬車」などで約700人の顧客を集めたスマートデイズが今年1月下旬に事実上破綻(はたん)。スルガ銀融資で通帳などの改ざんが横行する実態を朝日新聞が報じたのは2月13日だった。その直後からスルガ銀の融資現場は一変する。通帳の原本確認を徹底し、不動産融資自体がしぼんでいく。

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今回の取材で驚くのは…?