『4月7日付けで、SAMURAI BLUE(日本代表)監督のヴァイッド・ハリルホジッチ氏及びコーチのジャッキー・ボヌベー氏、フィジカルコーチのシリル・モワンヌ氏、GKコーチのエンヴェル・ルグシッチ氏との契約を解除し、西野朗氏を新監督にすることについて4月12日開催の第5回理事会で報告の上、承認されたことを確認するとともに、念のため再度の承認決議をお願いしたい。』(協会ホームページより)

 これでは、解任の理由も手続きも「後付けです」(ハリル前監督の代理人弁護士)と思うのは、無理もないだろう。

 ハリル前監督の提訴の動きに対して、協会は回答に、釘を指す文面を入れている。

「協会は『契約に起因・関連する紛争は、FIFA紛争解決機関で行うことであって、東京地方裁判所には管轄権はない』と念を押してきたのですが、名誉毀損とかは別問題だと理解している。来週中の早いところで提訴することになります。ハリル氏本人は、名誉回復を一番求めていました。しかしそこについても協会から何もアプローチはなかった。こちらとしては、裁判をやろうというゴーサインをもらったと受け取りました」(ハリル前監督の代理人弁護士)

 今回の一連の動きを見ると、田嶋会長が本来、踏むべき手順を踏まず、トップダウンで決断したことがわかる。その余波で、ハリル前監督だけでなく、日本代表スポンサーも激怒したというのだ。日本代表に商品提供を提供するスポンサーに、監督交代に関する情報を事前に伝えなかったことで協会が慌てて対処する羽目になった。

「怒ったスポンサーが、ワールドカップに関するイベントで、当初出演予定のなかった日本代表の某有名選手を呼ぶことになりました」(関係者)

 田嶋会長が周囲や関係者に十分な根回しをせずに動いた結果、ハリル前監督だけにでなく、関係者にも余計な火種を残したのだ。

 そんな危うい状況だが、ハリル前監督解任劇については、契約期間内の給与も払うこともあって、協会側としてはもう「なかったこと」となっているようだ。回答にこんな箇所がある。

『WCロシア大会を目前に控え、日本サッカー界が一致団結し、ワールドッカプという檜舞台で代表チームが最大限の力を発揮できるよう、あらゆる面でサポートしていくことこそが、現時点での最重要課題であると考えております。ハリルホジッチ氏及び貴職(代理人弁護士を指す)におかれても、本件が代表チームへ与える影響及び日本サッカー界が置かれた現状を十分にご理解いただきますようお願いします』

 ハリル前監督にこれ以上、騒がないでくださいということなのか。監督をハリル氏から西野氏へ交代させるという今回の田嶋会長の決断がワールドカップに果たしてどのような結果をもたらすのか?裁判の行方もその結果次第ではないか。(本誌 大塚淳史)

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