肺がん全体の半数以上を占めるのが「腺がん」で、肺野型であることが多く、非喫煙者の女性にもみられる。腺がんの中でも、CT検査で薄い影のように見える「すりガラス様陰影」と呼ばれるタイプは、進行がゆっくりでおとなしい性質のがんと考えられる。

 次に多いのが「扁平上皮がん」で、約20%を占める。喫煙と関係の深いがんであり、肺門型が多かったが、フィルター付きたばこの普及により減少傾向にある。「小細胞がん」も喫煙者に多く、進行が速いことが特徴である。

■不要な手術はしない、医療の考え方の一つ

 肺がんの治療は「手術」「放射線治療」「薬物治療」の三つが基本となる。治療法は、がんの進行度(病期)や組織型、患者の年齢や体力などにより決められる。

「高齢による体力の衰えや、持病の有無などの身体的な条件のほか、例えば、認知症がないか、病状や治療について理解ができるか、治療に前向きに取り組めるかなどといった精神的な状況と、仕事やライフスタイルを含めた社会的状況、そして患者さんご本人の意思も考慮した上で治療方針を決めます」(同)

 原則として、手術の適応となるのは非小細胞がんの早期(I期、II期、IIIA期の一部)のみ。I期で3センチ以下の早期がんであれば、手術で8割超が完治するといわれる。

 ただし、坪井医師によると、近年では悪性度が低い(おとなしい性質の)非常にゆっくり進行するタイプのがんがあることが判明した。この場合はすぐに手術をせず、経過を観察するケースもあるという。

「患者さんが『気になるのでとってしまいたい』と希望される場合は手術で切除します。しかし、『できれば手術したくない』という方や、年齢によるからだへの負担が懸念される場合は、すぐに生命に関わることはないと考え手術をせずに様子をみます。必要な人に必要な治療をすることが重要であり、『不必要な手術はしない』という選択肢も、これからの医療の考え方の一つだと思います」(同)

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