オリンパスでは、ウッドフォード社長解任の後に、粉飾決算という犯罪行為が明らかになっている。その点は奥山さんのケースとは異なるが、自身の体験とウッドフォード氏を重ね、「組織から放り出され、組織と闘わなければいけない、そのつらさが身にしみた」。

 本を読んだ奥山さんが映画にしようと発案し、出演者の説得にも当たった。解任直後のウッドフォード氏を支援した宮田耕治・元オリンパス専務(76)については、奥山さんが直接会って、「風化させてはなりません」と訴えたという。

「とにかく形に残しましょう。そうすれば後世の人が掘り起こしてくれることもある」

 製作・編集作業は山本兵衛監督(44)に委ねた。できあがった作品について奥山さんは「ウッドフォードの言葉、宮田さんの言葉は、人間としての痛みを表現している」と高く評価している。

 一方で、「日本社会の隠蔽(いんぺい)体質」に焦点を当て、欧米との「文化的価値観の衝突」を浮かび上がらせるような部分については異論があるようだ。

「それも一つの見方だが、もっと普遍的な問題がある。別の機会に私自身が編集してみたい」

 欧米と日本の文化衝突ではなく、日本人同士でも起こり得る問題だととらえている奥山さん。新作も見られるのかもしれない。

「サムライと愚か者―オリンパス事件の全貌」は、19日、シアター・イメージフォーラム(東京・渋谷)で上映を始める。大阪や名古屋の映画館にも順次広げる予定だ。(朝日新聞編集委員・奥山俊宏)

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