本来は、一つの病気を1カ所の病院で治療する場合、保険診療と自費診療を同時にすることは認められません。「混合診療」と呼ばれる違反行為です。でも歯科の場合、「患者が希望した場合に限り、歯冠修復や欠損補綴を保険外診療の扱いにする」という”通則”があります。希望すれば保険診療の途中で、自費の治療を入れることができるのです。

 というところで冒頭のギモンに戻りましょう。保険と自費の価格差、材料費の違いだけでここまで変わるものなのでしょうか?

「価格は歯1本の値段で決まるわけではありません。歯の型を取る材料も、歯科技工士が製作にかける時間もまったく違います。すべて反映されての価格差なのです」(若林歯科医師)

 自費診療の場合、値段は各歯科医院で独自につけることができます。失礼ですが「ぼったくり」かどうか判断できるのでしょうか?

「十分納得できるまで歯科医師と話をすべきです。逆に言えば、それだけの説明をしてくれない歯科医院では治療すべきではありません」(同)

 値段は材料費や技工料のほかにも、歯科医院の立地や規模によっても違います。ホームページなどで近隣の自費診療の価格を比較してみるのもいいでしょう。

 現在、日本の歯科医院の多くは保険診療を前提にしながら、補綴やインプラント治療で部分的に自費診療をおこなっています。一方で大都市圏には「自費診療のみ」「8割は自費、希望によっては保険」という歯科医院も存在し、患者のニーズを満たしています。

◯取材協力
若林歯科医院 院長
若林健史 歯科医師

(文・神 素子)

※週刊朝日MOOK「いい歯医者2017」より