帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
認知症を予防するためにはどうすればいいのか(※写真はイメージ)認知症を予防するためにはどうすればいいのか(※写真はイメージ)
 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「認知症を予防するためには」。

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【ポイント】
(1) 認知症は人間まるごとに関わる老化現象である
(2) 認知症の予防や回復にも免疫システムが働く
(3) 免疫力と自然治癒力を高めなければいけない

認知症は老化現象であり、だからこそ、がんと同様にからだだけの病ではなく、こころやいのちにも深くかかわった人間まるごとの病だと書きました。このへんのところをもう少し、具体的に説明したいと思います。そのために、認知症についてのおさらいです。

 認知症には大別して三つの種類があります。

【1】アルツハイマー型認知症
「アミロイドβ」というゴミのようなタンパクが神経細胞の周りに異常に蓄積して老人斑をつくり、その後「タウタンパク」が神経細胞の中に異常に溜まる。いずれの蓄積も最大の原因は老化。

【2】脳血管性認知症
動脈硬化による脳内血流の減少が原因。動脈硬化を助長するものとして、高血圧症や高コレステロール血症が挙げられるが、主因はあくまで老化。

【3】レビー小体型認知症
「αシヌクレイン」というタンパクが神経細胞内に溜まってレビー小体を形成するのが原因。これも老化現象。なおレビー小体が脳幹部のドーパミン神経細胞内に形成されるとパーキンソン病の症状を呈する。

 このように認知症はいずれも原因は老化にあるのです。老いることは生きとし生ける者の宿命ですから、これを無くすわけにはいきません。でも少しでも、進行を遅らせたいものです。

 私はがんの予防については、半世紀余りにわたって取り組み、心を砕いてきました。その結果、得た結論は、まずは免疫力と自然治癒力を高めなければいけないということです。

 免疫力と自然治癒力は別のものです。免疫力はまだしも、自然治癒力の正体は全く解明されていません。私自身は人体の生命場の秩序性を回復させる力が自然治癒力だと思っています。

 
 免疫力については、様々なメカニズムが明らかになってきています。がん治療で今後、最も有望なのが免疫のメカニズムを利用した免疫療法でしょう。

 さて、認知症におけるアミロイドβやタウタンパク、レビー小体もがん細胞と同様に免疫の対象となるのでしょうか。もし、認知症においても免疫療法が有効であれば、大いに期待できます。調べていたら、最近の知見では、免疫と脳の関係がクローズアップされていることがわかりました。

 3月に日本語訳が出版されたばかりの『神経免疫学革命──脳医療の知られざる最前線』(ミハル・シュワルツ、アナット・ロンドン著、早川書房)に詳しいのですが、脳の状態は免疫のシステムによってバランスが保たれており、認知症の予防や回復にも、免疫力が有効に働くというのです。

 やはり認知症もがんと同様に免疫力を高めることが必要だったのです。免疫力が有効ならば、自然治癒力も同様だと私は思います。

 それでは、免疫力と自然治癒力を高めるにはどうすればいいのでしょうか。このテーマに私は長年取り組んできました。それについては、次回、お話ししたいと思います。

週刊朝日 2018年5月18日号

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帯津良一

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帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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