この実験は、1960年代に行われた古いものなので、参加した子どもたちのその後の勉強の成績や、社会での功績を追うことができています。結論として、15分待てた子どもたちは、学力も高くなり、ストレスにもうまく対応し、人気の会社に入った子が多いとわかりました。

 マシュマロを我慢したということは、「今」より「将来」の利益を見据えていたということです。対して、マシュマロを食べてしまった子は、ギャンブルやお酒にハマる確率が高かったそうです。大人でもよく「ダイエットは明日から」と先延ばしにしている人がいますが、そういう「今の自分に甘い人」は大抵ずっとダイエットできません。そこを我慢して自分を律し、「未来のために今頑張る」ことで、目標が達成できるかどうか決まるのです。

 小さい頃から「我慢を教える」というのは、子どもの将来の成功につながってくるわけです。我慢や忍耐力は、脳の前頭前皮質という場所を鍛えることでついてくると言われています。ここは、幼児期から8歳まで徐々に成長し、8歳から15歳あたりで急速に発達します。まあ、幼児期はある意味発達していないともいえるので、ワガママが多いのは仕方ないともとれます。ただ、この脳の成長期を逃す手はありません。 

  我慢できない理由に、「この前はお菓子を買ってくれたのに、なんで今日は買ってくれないのか」「前は遊んでよかったのに、なぜ今日はダメなのか」と、前はやってもよかったはずという「経験則」があります。我慢させる基準が、大人の気まぐれでは話になりません。ここまではダメ、ここまではよいという線引きを、親がしっかりしましょう。 

 そして、子どもに「きちんと納得できる理由」を話し、ダメな理由を納得させるのも大切です。先日、交代で遊ぶ遊具で、なかなか交代しない息子に対して「みんなの気持ちを考えて」「自分が遊びたいものはみんなも遊びたいの」「自分が人に嫌なことをすると、相手が自分に嫌なことをしてきても仕方ないよ」とたしなめました。因果応報の考え方です。すると息子は「僕は悪い子になった」などと言いだして、交代するのを拒否したのです。しかし、このセリフから一応「皆が遊びたいのに自分が独占している」=「悪い子」という図式を、頭では理解しているわけです。そこで「まこと君が悪い子なら、ママも悪いママになる。だから1人で先に帰っちゃうね。バイバーイ」と演技をすると、急いで「僕は良い子になった」と遊具を譲りました。因果応報の法則は、子どもに分かりやすいかと思います。

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