カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
(c)カトリーヌあやこ
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 漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「くノ一忍法帖 蛍火」(BSジャパン 火曜20:00~)をウォッチした。

【ベッキーのイラストはこちら】

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 ベッキーが「くノ一」。ひなびた温泉街のスナックの壁に、色落ちしたポスターを発見した時のような、そんな味わいがある。

 しかも山田風太郎原作だ。山田の「くノ一」ものと言ったら、「忍法筒涸らし」(この忍法をかけられた者は死ぬまで射精し続け、身体中の水分や血液まで抜き取られてしまう)、「忍法夢幻泡影(むげんほうよう)」(くノ一の秘部から吹き出すシャボン玉のような泡で敵を取り込み、精神を幼児退行させる)などなど、奇想天外&驚天動地のエロワンダーランドですよ。

 まさか「くノ一」ベッキーのセンテンスがスプリングしてしまうのかと、もう気分はスポーツ新聞のピンク面。そんな勢いで見た第1話の印象は「エロい」というより、ひたすら「ゆるい」のだった。

 伴天連の血をひく「くノ一」お螢(けい=ベッキー)は、お美代(黒川芽以)、お玉(樋井明日香)と共に隠密の旅に出る。しかし赤、青、黄色の着物をまとったこのトリオ、あっという間に敵に捕らわれ、即「私たちは根来衆、高田藩を探りに来ました」と白状しちゃう。なんだこれ、「くノ一戦隊ボケレンジャー」か。

 いかにもなエロじじぃが「女体改めじゃ~」と山田原作展開に持ち込むが、そこは夜8時台。「ヌハハハ」「おやめください」「ヌハハハ」の繰り返しで寸止めなんである。しかもベッキーは一切関わりなし。

 肝心の「忍法蛍火」もベッキーの瞳が妖しく輝き出し、敵を意のままに操るという、これただの超能力。だがしかし、色香を使って相手の心にスキを作らなければ術はかからない。お待たせ、ベッキーのセクシータイムだよ。網タイツの太ももチラッ、襟元ゆるめて鎖骨チラッしただけで、「これは桃源郷じゃ~!」と昇天してしまう悪役がチョロいったらチョロい。

 同僚「くノ一」に「まさかお螢さんて生娘ですか? 一回くらい(男と)やったらどうですかー?」なんて言われるシーンでは、「ベッキー無理すんな……」って気持ちだったのに、いつの間にか「ベッキー、もうちょっと無理しろ」になってるから、あら不思議。

 元気な時も、反省する時も、ふっきる時もやけに全力。何にしても頑張りすぎがアダになりがちなベッキー。このくらいゆるい脱力ドラマにつかっている方が、いずれいい温泉タマゴになれる気がする。

週刊朝日 2018年4月20日号

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カトリーヌあやこ

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カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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