古いアナログのシンセサイザーなども起用し、MIDIを使って複数の機器をシンクロさせるやり方を習得。そうした機材を起用した曲作りには新たな発見もあり、結果、ごく一部を除いて生ドラムは一切禁止というルールを決め、レコーディングに臨んだ。

 表題の“Toys Blood Music”も、“オモチャのようなマシーンにも血の通った生っぽさがあり、人を相手にプレイしてる感覚に近かった”という実感に由来するようだ。

 幕開けを飾る「マディウォーターREMIX ver.」はまさに意表を突くサウンドによる。マシーンが奏でる性急なリズム、ファンク・テイストのシンセ・ベースによるそれは、ジャングル・ビート/ドラムンベース・スタイルそのもの。

 そうしたマシーンのリズムにからむソリッドな生ギターのカッティングが、独特のノリ、グルーヴを生み出している。それこそがこの曲の音作りの肝、狙いであることは明らかだ。

 表題を見ると、ブルース界の巨人、マディ・ウォーターズが思い浮かぶが、さにあらず、かつてはキレイな川のメダカだったが、泥沼に生息するナマズに変わり果ててしまったという物語。テレビドラマ『不機嫌な果実』の主題歌で、歌詞は不倫という泥沼に溺れていくドラマの展開に即している。“熟れていく躯 覚えてく嘘”“楽しいのはいつも最初だけ”と、主人公の嘆きを巧みに表現している。

 続く「オモチャの国」ではマシーンのリズムに重厚なシンセサイザーがからんだプログレ・テクノ風で、エレキギターのリズム・カッティングやフレイジングが効果的だ。

お金をちゃんと払えば ここに住んでもOK”という“オモチャの国”の話だが、“言葉の通じない人にバンバン土地を売ってあげたりしてる”“メルトスルーの行き先はぜんぜんスルーしてすぐ天気予報”という今の日本の世相を反映した皮肉たっぷりな歌詞。東日本大震災による福島第一原発事故に対し、自身の曲「ずっと好きだった」の替え歌「ずっとウソだった」を歌い、反原発をアピールした斉藤らしい、硬派な曲だ。

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