室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。
(c)小田原ドラゴン
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 安倍昭恵首相夫人が経営する飲食店に脅迫状が届く事件が発生。作家・室井佑月氏は、新聞各社の手紙の内容に関する報じ方に邪推が働く余地があるという。

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*  *  *
 
 3月16日の深夜、産経ニュースに「安倍昭恵首相夫人経営の飲食店に『脅迫状』」というのが出ていた。なんでも、

安倍晋三首相の妻、昭恵氏が経営する都内の飲食店に昭恵氏を脅迫しているとみられるはがきが届いていたことが16日、警視庁神田署への取材で分かった。15日午後3時ごろ、飲食店の店長が店のポストに投函されたはがきを発見。署に相談した。詳しい文面は不明だが、「殺す」などといった直接的な脅迫の文言はないという〉

 よくわかりまへんな。

「直接的な脅迫の文言はない」といいつつ、「安倍昭恵首相夫人経営の飲食店に『脅迫状』」という見出し。

 ってことは、ちょっと過激な口調のお願いだったり? 「国会に出てきてほんとのことを話さないと、もう大変なことになりますよ」、程度の。

 産経新聞クオリティーでは、直接的な脅迫の文言がなくても、脅迫になるんか? まさか、昭恵夫人に国会でほんとのことしゃべれっていっただけで、脅しになるとか?

 ……というようなことを考えていたら、日付が変わってすぐ毎日新聞に、「安倍昭恵さん 脅迫の手紙、経営する飲食店に」と一報が載った。

〈捜査関係者によると、手紙は昭恵さんが国会の証人喚問に出なければ、危害を及ぼすという内容という〉

 ふうん、じゃやっぱり、手紙の内容は脅しだったんか。産経新聞、疑ってごめんよ。

 でも、昭恵夫人に変な手紙が送られて、そのニュースのキモは、やっぱ毎日新聞に書かれている「国会の証人喚問に出なければ、危害を及ぼす」ってところなんだと思う。

 産経は、そこをわけて書いていた。直接的な脅迫の文言はない、と書いた後、一行開けてべつの話みたいに、

〈昭恵氏をめぐっては、学校法人「森友学園」に対する国有地売却に関連して、野党が国会への証人喚問を要求している〉

 と載せた。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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