リカルド・フラカーロ氏(山田厚史撮影)
リカルド・フラカーロ氏(山田厚史撮影)

 3月のイタリアの総選挙で、新風の「五つ星運動」が第一党に躍り出た。ネットを駆使し、「政治を市民の手に」と呼びかける新たな政治運動。ジャーナリストの山田厚史氏が、五つ星運動の影の内閣「直接民主主義担当相」リカルド・フラカーロ下院議員に、躍進の理由と今後の展望を聞いた。

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──第一党となり政権が視野に入ってきました

 前回の総選挙では「連立協議には応じない」と公約し、5年間野党として既成政党を批判してきた。今回は「政権を引き受ける用意がある」と表明して選挙に臨んだ。第一党になったからには政権をめざす。政策で一致できる相手とは組む。だが、他党が組閣する内閣に加わることはない。五つ星が責任をもって運営する内閣に加わってもらう。ただし、閣僚ポストを取引条件にする交渉はしない。協議するのはあくまでも政策だ。

──イタリアの政治不信の根源は何だと思いますか

 政党に責任がある。汚職・腐敗は論外だが、右も左も公約とやることが違い過ぎた。左派は「労働者を守る」といいながら労働法規を改悪した。右派は「企業を大事にする」と言いながら増税し、税金取り立て機関をつくり、徴税を厳しくした。弱い立場の人々がおろそかにされている。私たちは、弱い人を大切にする社会が強い社会になると考える。中小企業が元気になれば、雇用が増え労働者に恩恵をもたらす。労使は対立するとは考えていない。

──どのような政策に重点を置いていますか

 まず労働者の権利、安定した企業経営。重過ぎる税金の是正、腐敗・汚職の撲滅、治安の維持、秩序ある移民政策。そして、直接民主制だ。

──代議制は失敗した、ということでしょうか

 政治家が政策をどう考えているか、本当のことを市民は知ることなく投票させられる。白紙委任状を渡しているようなものです。自分たちの共同体の運命を自己決定できない。この仕組みを変えたい。政策決定に人々が参加し、意見を言う。その声を反映して法律をつくる。こうした当たり前のことを今の政治はやっていない。

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市民に政治を任せても大丈夫?