──市民に政治を任せて大丈夫ですか

 誤ることもあるでしょう。しかし、自己修正する力が市民にはある。自分たちが責任を持つ、という自覚は人々の意欲を高めます。直接民主主義には憲法改正が必要です。まず地方政治から取り組む。身近で大事な案件を住民投票にかけ、やがて国政へと広げる。自分たちの決定で政治が動くことが実感できれば無関心ではいられない。影の内閣に担当大臣を置こうというのはそのためです。市民が政治に参加する文化をつくっていきたい。

──五つ星は政治の素人だという批判があります

 では政治のプロは何をしたのでしょう。巨額の財政赤字をつくり、腐敗とスキャンダルにまみれた政治にしたのは誰か。我々はその結果を引き受ける。問題はすぐに解決するほど生やさしくないでしょう。しかし、誤った政治を止め、流れを変えることが必要です。政党は失敗したのだから、権力を市民に返すべきです。

──五つ星の強みは何ですか

 だれのカネで政治活動をするかで、政治の方向は決まる。我々は市民の小口の資金で活動している。前回の総選挙では70万ユーロが集まったが、使ったのは40万ユーロ。余ったカネは、震災で被害を受けた学校に寄付した。金持ちや企業から献金を受けていないことが我々の強みだ。ロビー活動を受け付けず、手を汚していないから、利権構造に切り込むことができる。そんな立場にあるのは我々だけだ。

──メディアでは、五つ星はポピュリズムだといわれています

 市民の声を反映するのが大衆迎合でしょうか。私たちが躍進するのを恐れる人たちが貼ったレッテルです。メディアの側にも問題がある。自由なメディアは極めて少ない。

──メディアにはどんな問題がありますか

 テレビ局を見てください。イタリアには6つの大きなテレビ局がある。1~3までが公共放送ですが、経営トップは政府が決める。公共放送が政権の管理下にあります。民放3局はすべてベルルスコーニが支配している。新聞も似た状況です。政府や政党に近い企業の影響下にある。大勢は強いもの側についている。そんな状況でも頑張っているジャーナリストはいます。彼らは英雄です。

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大事なことは生身の人間が向き合うこと